第13話

「ねぇ、湊。」



「ん?」



「私…バイトしたいんだけど…。」



裸のままベッドの中で抱き合うと、外は少し寒くても体温が溶け合うようで暖かい。



月明かりが部屋を薄暗く照らすのが照明で明るい人工的な部屋よりも私は余程好きだった。



「男が居ないところならいいぞ。」



「そんなところある?」



「さぁな。ないかもな。」



それって実質バイト出来ないって言われてない…?



ちょっとムッとして湊を見ると、それに気がついた湊が私の後頭部に腕を回し、引き寄せた。



自然と、湊の胸に顔を埋める私。



耳を澄ますと、トクトクトク…と湊の心臓音が聞こえてきた。



「要するに“しなくてもいい”って言ってるんだ。」



「私はしたいよ…。」



「なんでそんなにしたいんだ?」



「…少しでも自立するため?」



「必要ないだろ。」



「でもっ…このまま湊に甘えてばっかりじゃ私…湊なしじゃ生きられなくなっちゃう…。」



「それでいいじゃん。」



「ねぇ…湊…私真剣に考えてるの。」



「俺だって真剣に考えてるよ。お前が大学卒業したらもう少し広い部屋借りて。お前には俺のバーで働いて欲しいんだ。」



「…もし、湊のバーで働くとしても私やれることなんてないじゃない。」



手伝えることがあるならもうやってるよ…きっと。



「まぁな。百歩譲ってキッチンが限界だろうな。ホールは…何よりお前がもし酒の入った男共に“そういう目”で見られることに俺が耐えられないから多分許可出さないけど。」



「…私はいっつもそれに耐えてるんだよ。」



「知ってる。」



その言葉に私がガバッと顔を上げて湊を見上げると、ほんとに食べられてしまいそうな激しいキスが落ちてきた。



「…んっ。」



私を貪り食う気なの、ってくらいのキスが湊は好き。



目をぎゅっとつむってこのキスに耐えるのは、初めて湊とキスをした時から変わらない習慣。



「…お前が嫉妬に狂って俺を求める姿がたまらなく好きだからな。」



「性格悪いな…ほんと。」



「お前だってそうだろ。俺が大学進学止めた時もそう言ったじゃねぇか。」



「そう、だったね…。そういえば。」






『お前が進学して、俺以外の男と出会って仲良さげに話すことがあるのかと思うと、気が狂いそうになる。』

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