星降る夜の騎士

かなちょろ

 星降る夜の騎士

 僕は今日、五歳になった。

 誕生日だ。

 でもお母さんはいない。

 お父さんと二人だけの誕生日。


 ロウソクの火を吹き消し、ケーキを食べてプレゼントを開ける。

 プレゼントはロボットのおもちゃだ。

 でも僕にはもっと欲しいものがある。

 それはきっと買うことが出来ない。


 お父さんに「おやすみなさい」を言って、部屋に戻る。

 カーテンを閉める前に窓から空を見ると星がたくさん輝いている。

 僕はその夜空にあるたくさんの星に願いをした。

 僕の願いが叶います様にと。


 ベッドに入り、眠りにつく。


 しばらくすると、窓をノックする音が聞こえる。

 ゆうれい? ちょっと怯えながら窓を確認すると、手のひらサイズの光る星型の星が起用に立っている。

 窓をそっと開け、部屋に入れてあげると部屋の中を飛び回り僕のベッドまで飛んで来た。


「ありがとう。 でもこうしちゃいられない。 君も早く早く!」


 手のひらサイズの星は僕の腕を引っ張り窓の外まで引っ張って行く。

 星の引っ張りは強くて僕じゃ踏ん張れない。

 そして僕は窓の外へ……。


 落ちたと思っていたら僕は星と一緒に空を飛んでいる。

 そして前にお父さんと来た事がある建物の上までやって来た。

 その星は言う。


「ここからは君の力が必要なんだ。 頼んだよ」

 

 そして僕は落ちた。


 気がつくと、また見た事のない野原にいる。

 一緒にいた星もいない。

 ここは?

 辺りを見回す。

 誰もいない。

 僕は寂しくなり、泣いてしまった。

 いくら泣いても誰もいない。 誰も来ない。

 僕は泣くのをやめて光りが見える方へと歩きだす。


 そこには一振りの剣が刺さっている。

 剣が光っていたんだ。

 僕はその剣をおもいっきり引き抜いた。

 抜かれた剣から出た光りがまるで何処かを指し示す様に一筋の光りとなる。

 僕はその光りが指す方へと歩き出す。


 突然暗闇から僕より大きな人影が現れた。

 影は何も言わず僕に向かって持っている剣を振ってくる。

 僕も剣で対抗した。

 振り回した剣が影を倒すと、その影から小さい小さい光る星がポトリと落ちて来た。

 その星は見た事もないくらいに光り輝き、暖かい。

 無くしちゃいけない。 そんな想いが込み上げその星を大事に持って先に進む。


 やがて禍々しいお城に辿り着くと、黒いドラゴンが現れた。

 ドラゴンは言う。 「その星を置いていけ」と。

 僕は怖かった。

 泣き出しそうになった。

 でも持っている星の暖かさが励ましてくれているようで、涙をグッと堪えた。

 この星は手放さない。

 僕は黒いドラゴンに立ち向かった。


 もう泣いたりするもんかと、立ち向かう。

 ドラゴンの爪を高く飛び上がり避け、塔の上に着地すると今度はドラゴンが炎を吐いて来た。

 塔が崩れてバランスを崩す。

 その時、持っていた星を落としてしまった。


 星が落ちて行く先にはドラゴンが大きな口を開けて待ち構えている。

 僕は塔から飛び降り、空中で星をキャッチして胸に抱えた。

 抱えた星から光りが迸ると僕は光り輝く鎧を見にまとい、大きな剣を握りしめていた。


 空だって飛べるこの鎧で僕はドラゴンの炎をかい潜りドラゴンに剣を突き立てようとした。

 でもなんだろう……、このドラゴンなんだか泣いているような気がする。


 僕は剣を捨て、大きなドラゴンの顔を抱きしめる。

 すると、僕をここに連れてきた星が空から落ちて来てドラゴンの中に入っていった。


 ドラゴンの黒い影は消え去り、白く輝くドラゴンへと姿が変わったんだ。

 禍々しい姿をしていたお城も白く輝く綺麗なお城へと変わり、ドラゴンの背に乗りお城の入口まで運んでもらう。


 お城の扉が開き、光り輝く場所から大人の女の人と一緒に小さな女の子も階段から降りてくる。

 二人の顔は良く見えないけど、二人はにこやかに笑みを浮かべると、僕はドラゴンの背に乗せられ空高く舞い上がる。

 ドラゴンに家の部屋まで送ってもらうと、僕はそのままベッドに倒れ込んだ。


 朝早く、慌てたお父さんに起こされると前に来た建物の前にやって来た。

 

 そして建物の部屋に慌てて入ると、お母さんが僕に笑顔を向けてくれる。

 そのお母さんの腕の中には小さな小さな赤ちゃんが抱かれていた。

 お母さんに抱き着きたいけど赤ちゃんがいるので、ゆっくり近づく。

 そう、僕は今日この赤ちゃんのお兄ちゃんになったんだ。


 お母さんは夢の中で怖い影から妹と一緒に助けてもらったと言っていた。

 お母さんは言う「お兄ちゃんは妹の騎士ナイトさんね」その優しい手に撫でられた僕はお母さんに抱きついた。

 そして抱かれている妹を見る。

 その小さな手が僕の指を力強く握る。

 お母さんには寂しかった気持ちを伝えるけど、僕はもう泣かない。

 僕は妹を守る騎士ナイトになったのだから。

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星降る夜の騎士 かなちょろ @kanatyoro

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