王宮での謁見
レイは重厚な石造りの王宮へと足を踏み入れていた。壮麗な大理石の柱が立ち並び、光を反射して煌めくその光景は、彼の故郷の村では考えられないほどの壮観なものだった。彼の隣には、フィンとリヴィアが控えている。
やがて広間に通されると、玉座に座る王と、周囲に並ぶ重臣たちの姿が見えた。厳かな雰囲気の中、彼は無意識に背筋を伸ばし、表情を引き締める。
「君が精霊と契約を交わしたというレイか。」王は鋭い目つきでレイを見つめながら言った。
「はい、レイと申します。」レイは簡潔に名乗り、王に一礼する。
「村からの報告では、君が「剣士スキル」持ちを「釣りスキル」で圧倒したと聞いた。とても信じがたい話だが、実際にこの国にとって重要な人物になるかもしれぬ…」王の声には疑念と興味が入り混じっていた。
その時、王の隣にいた重臣の一人が一歩前に出て、「もし本当に精霊と契約したのであれば、その証を見せていただけないだろうか?」と問いかけた。
レイは少し戸惑いながらも、ゆっくりとフィンに目を向けた。フィンは笑顔でうなずき、軽やかな動きでレイの肩に舞い上がる。そして、彼の周囲に淡い光が広がり、精霊の力が確かにここに存在していることを示してみせた。
重臣たちは目を見開き、驚愕の表情を浮かべる。「これほどの精霊と契約するなど…まさか本当だとは!」彼らはざわめき、レイへの視線が一層注目を帯びてきた。
王もまた、鋭い視線を崩さずに言葉を続けた。「精霊と契約できる者は極めて限られている。この国の未来を託すべき存在か、見極めねばならぬな。」
フィンがふわりと降り立つと、レイの隣に控えていたリヴィアも姿を現し、静かに敬礼する。「私も彼と契約を交わしました。この者の心には純粋な力が宿っております。」
リヴィアの言葉に、王と重臣たちはさらに目を見張った。二体もの精霊が契約者として認めたという事実は、尋常ではないからだ。
王は少し間を置いて考え込み、「…君は一体、何者なのだ?」と問いかける。
「僕はただ、釣りが好きな村の青年です。」レイは少し照れくさそうに答えたが、その言葉には裏のない素朴さがにじみ出ていた。
「精霊の力でさえも、ただの釣り好きによって手に入るものなのか…不思議な男だな。」王は呆れたように微笑を浮かべたが、どこか警戒心も抱いているようだった。
「ともあれ、君のような存在がこの国にとっても大きな力になることは確かだ。君にはしばらくこの都に留まり、私たちと協力してほしい。君が真に精霊使いとしての力を備えているか、この王宮で確かめさせてもらう。」王の声には、明確な意図が含まれていた。
こうしてレイは、王の期待と重臣たちの注目を浴びながら、精霊使いとして王都での生活が始まることとなった。だが、王都で待ち受ける新たな挑戦や試練の影が、彼にどんな運命をもたらすのか…その答えはまだ誰にも分からなかった。
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