第19話「やっぱり俺ってそこそこ有名だったのか」
「……聖女、ですか」
「思い当たる節とか、ある?」
全てを聞き、話を噛み砕きながらゆっくりと理解しようとしている遥にステラは聖女としての力が彼女にあるのかどうかを問うた。
「結論から言って、多分……私で間違いないと思います」
「おお……話が早いな。なんかそれらしい力でも?」
「この世界に来る前に、頭の中で声がしたんです。世界を救う聖女がどうのこうのって……で、気付いたら森の中にいて、うろうろしていたところをリファナさんと出逢って……その後、お店の手伝いをしているときなんですけど、枯れていた花に触れたらまた咲いたんですよ。それに怪我も触れただけで治ったり……」
「なるほど……確かにゲームのヒロインと同じだな」
癒しの力は聖女だけが持つ特別な魔力。遥が聖女であることは間違いない。
問題は、彼女が邪龍討伐に加わってくれるかどうか。そして、このことを他の人にどう説明するかだ。
「その、ステラさんのいうゲームって、なんていうゲームなんですか?」
「うん? 君と恋と運命の物語、だけど」
「あー、それか! なんか知ってるような気がしたんですよ。結構前に出たゲームだから忘れてた」
「え? 結構前?」
「はい。4,5年くらい前じゃないですか?」
「いや……俺が死んだのはそのゲームが出て半年後くらいだったんだけど……え、じゃあ君は俺が死んでから5年後の日本から来たってこと? 俺、この世界で生まれて18年も経っているのに?」
「時間の流れが異なるんでしょうね。ってことは、私はまだ一ヶ月くらいしか経っていないから、すぐ帰れれば数分くらいしか経過していないってことになるのかな」
ステラは遥がもっと未来から来たのかと思っていたが、意外とそうでもないことに少しだけ驚いた。確かに彼女の落としたスマホの形状も自分が持っていたものと大して変わりがなかった。
しかし、それほどジェネレーションギャップがないのは救いでもある。
「それにしても5年か。俺のことなんて誰も覚えてないんだろうな」
「ステラさん、有名人とかだったんですか?」
「有名って程じゃないよ。コスプレとかして活動してたってだけ」
「コスプレイヤーだったんですか。あれ、もしかしてこっちでも女装とかしてました?」
「うん。してたけど?」
「あれ、もしかして私知ってるかも。当時、有名コスプレイヤーがイベント会場で事故で亡くなったって騒がれてましたよ」
「うわ、マジで? それ俺じゃん」
「ちょっとそっちの界隈に詳しくないんで名前とかは覚えていないんですけど……そっか、それでこの世界でも女装を……」
「うん。だってノーメイクで美少年なんだよ。最高じゃん」
さらっと言うステラに、遥は少しだけ引いてしまった。どちらかと言えば教室の隅で本を読んでいるタイプのオタクなため、ステラのような陽キャタイプのオタクとは今まで付き合いがなかった。どちらかといえば避けて通ってきたタイプである。
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