第15話「これ少女漫画みたいな展開か」
「そうだ。ステラ、落ち着いたら一緒に住まないか?」
「え?」
長い惚気の時間が終わり、入れ直した紅茶を飲みながら落ち着きを取り戻そうとしていると、ノックスがまたしてもステラの予想しない発言をしてきた。
確かに婚約したのだから、いずれは一緒に住むことにはなるだろう。しかし急に言われたために面を食らってしまった。
「実は城から少し離れた所に別宅があるんだが、そこの準備さえ整えばいつでも君を迎え入れることが出来る。まずは何人か使用人をそっちに移して君の部屋を用意しないとだから少し時間を貰うことになるが……」
「ま、待って。いや、俺にも心の準備ってものが……まだ親にも報告してないし、てゆうか俺はまだ学生だし!?」
「そうだったな。では卒業したら結婚しよう。確か来週が卒業式だったな?」
「……少女漫画みたいだな」
今は春。前世の日本の暦で言えば三月だ。この世界にも四季があり、前世と同様に一年が365日で進んでいる。これはゲーム内だからなのか、この世界の学者がそれを定めたのかは分からない。ステラ自身もそこまで深く知ろうと思っていない。
そして、ここ最近が慌ただしくて実感できていなかったが卒業式が迫っていた。すでにもう卒業に必要な課程を終えている。おかげであとは卒業式を待つだけで気楽な時間を過ごしているところに、今回の問題が発生したのだった。
「君は学年主席らしいじゃないか。兄たちが自慢していたぞ」
「まぁ、一応……こんな格好して馬鹿だとちょっと格好つかないんで」
人に注目されている自覚がある分、変なところは見られたくない。ステラはこの外見に見合うように勉学にも力を入れていた。
魔法学に関してははそこそこであったが、ミゼットの件でいつも以上に訓練したので最終的にこちらの成績も上がった。
「君は本当に努力家だな。兄たちと訓練しているところを何度か見かけたが、剣術の腕もいい。卒業後はどうするんだ?」
「服飾系に行きたいと思っているんですよね。服とか作るの好きですし」
「ほう。確かにいつもお洒落だしな。実際に作ったりしているのか?」
「ええ。今は簡単な服ばかりですけど。ドレスとかは勉強中です」
「じゃあ、いつか俺にもなんか作ってもらおうかな」
「それ、は、願ってもないというか……」
オタクとしてリアルに推しのコーディネートが出来るなんて夢のような展開を断る理由はない。
前世でコスプレ衣装を自作していたが、本格的なドレスはまだ手探りな状態だ。ノックスが着るような騎士服や正装も難しい刺繍が施されている。もっと技術を身に付けてから出ないと、とてもではないが王子に着せるなんて出来ない。
一応、卒業後は贔屓にしている仕立て屋で働かせてもらいながら本格的に勉強していくことになっている。ノックスに服をプレゼントするとしたら、四、五年は先になるだろうとステラは頭の中で思った。
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