三十八、論理くん、私と一緒に愛の旋律を奏でる

テスト期間が始まった。これまでみんなで勉強会をやってきたけれど、それでも埋められない解答マスがあって、残念だった。でも、そこそこできたような気もする。


週が明けて、答案が一斉に返ってきた。坂口くんは、五教科全てで、学年最高点、当然学年一位だった。私は、論理のおかげで国語はできたけれど、苦手な英語と数学が足を引っ張って、二百三十人中三十五位、五百点満点中、四百十四点だった。論理は、国語は坂口くんに次いで二位だったけれど、あとの科目が振るわなくて、百十二位、二百六十三点だった。優衣は、数学は九十点だったけれど、国語が三十点しかなくて、百二十二位、二百五十一点だった。沢田くんは、大体みんな五十点くらいで、百十九位、二百五十三点だった。論理が、前回のテストよりも順位を大きく下げたのが気になる。あの鬼ババが黙ってはいないだろう…。


もうすぐ体育祭がある。みんながんばって体育祭の練習に励んでいた。今日は、五十メートル走の練習があった。私は、走ることが苦手だし遅いので、五十メートル走が嫌いだった。順番に並び、順々に走って行く。あ、次は論理が走るみたい。論理も足が遅い。でも、がんばってほしいな。

「位置について、よーい、どん!」

論理が走り出した。でも、他の人たちから出遅れてしまった。走るフォームもなんだかおかしい。がんばれー論理ー!心の中で応援する。しかし、私の応援も虚しく、論理は他の人たちとかなり差をつけられてゴールした。でも、よくがんばったよ論理!男子が全員走り終わり、次は女子の番が来た。順々に走って行く。ついに私の番が来た。ああ、嫌だなぁ。でも、走ることからは逃げられない。

「位置について、よーい、どん!」

地面を蹴って走り出す。一生懸命腕を振って走るけれど、どんどん他の人に抜かされてしまう。結局、最下位の六位だった。それから全員走り終わり、今日の練習が終わった。

「論理、お疲れ様。私また最下位だったよ…。もう、走るの嫌いだよぉ、五十メートル走やりたくないよぉ…」

教室に戻り、自分の席に座ると、後ろの論理に話しかける。

「俺も最下位だった。できることなら五十メートル走なんてやりたくない。でも、文香が何位だとしても、一生懸命走るところは見ていたい」

「え?どうして?」

論理は、熱い眼差しを私に向け、私の手をとった。

「文香が走ってるとき、足が一生懸命動いていてさ…。俺、それが好きなんだ。文香の脳が、あの足の筋肉を動かしていると思うと、俺は…」

「論理?」

「俺は…とてつもなくたまらなくなる」

私は、キャンプファイアーの炎のようにメラメラと燃えるような想いを、論理から感じた。論理がそう思っていてくれるのならば、嫌な五十メートル走でも、一生懸命走ろう。論理がいるのならば、私はなんでもできる。そんなような気がした。


部活が終わった。今日の掃除当番は、私のことをあまりよく思ってはいない、佐伯さんと安田(やすだ)さんだ。もう掃除を始めなくちゃいけない時間なのに、二人は他の人たちと話していて、いつまで経っても始めてくれない。私は、唾をゴクリと飲み込むと、佐伯さんたちのほうに歩いていった。

「佐伯さん、安田さん、今日、掃除当番だよね?」

私に気づいた二人は、会話を止め、私をジッと睨んだ。うう…やっぱり私嫌われてるよ…。

「はあ?そうだったっけ?」

佐伯さんの(かわいいベビーソプラノなんだけど)怖い声が、私を脅かす。

「…うん。できたら、もう始めてくれないと、時間になっちゃうよ」

「ほう?」

佐伯さんは、安田さんと顔を見合わすと、ニタァと悪意のある微笑みを交わす。

「池田、てめぇ部長だよな?それなら掃除だってできるよな?」

「え?だって、佐伯さん…今日当番に…」

「当番?んなの知らねーよ。じゃ、あたしら帰るから。あとはよろしく、ばいばーい」

声だけは愛らしく佐伯さんはそう言うと、安田さんたちとニヤニヤ顔を見合わせながら帰っていってしまった。

「もう…ちょっとは協力してよ…」

私は、しかたなく一人で掃除を始めた。私が部長なの、やっぱり気に入らないんだろうな…。私は、少し胸が痛くなった。

「文香?」

論理が、音楽室に入ってくる。

「論理、どうしたの?」

「下で待ってたけど、他の部員はみんな帰っちゃったのに、文香一人が出てこないから、心配で見に来たんだ」

「ありがとう。ちょっと私掃除当番になっちゃって…、待たせてごめんね。すぐ終わらせるから」

私は、箒を動かす手を早めた。

「当番っていつも二人組じゃなかったっけ?どうして文香が一人でやってるんだ?」

うっ…。論理にはあまり心配かけたくないんだけど…。

「あはは…。一部の人たちの反抗期に付き合ってるんだよ」

私がそう言うと、論理の目が険しくなった。

「文香、どこの組織にも反乱分子はいるもんだけど、押さえつける厳しさもいるぞ…と言っても、文香にそれはできないよな」

論理はそう言って、掃除用具入れから箒をもう一本出すと、床を掃き始めた。

「論理、私一人でやるからいいって、座ってて」

「気にするな、今だけ合唱部員にしてくれ」

論理は箒を掃く手をやめない。

「論理…ありがとう」

二人で掃除をして、十分程で音楽室はきれいになった。

「ふう…きれいになったな。文香、今日も合唱お疲れ様」

「ありがとう論理。今は音楽祭に向けて練習してるよ」

「合唱部は、クラス発表とは別に、模範演奏があるから大変だな」

「演奏そのものも大変だけど、それ以上に今は人間関係が大変かな…。でも、部長としてがんばるね!」

私は、眉を下げながら笑う。そんな私を、論理は熱く見つめてきた。次の瞬間には、論理は私の後ろに回り込んで、私の胸を抱いていた。

「こんな華奢な体をして、そんなにがんばって……文香!」

「華奢じゃないよ、それに、私ががんばれるのは、論理がいてくれるからだよ」

私は、論理の腕に私の両手をそっと添えた。

「手に負えないことがあったら、言うんだぞ。力になるからな」

「ありがとう、そのときはよろしくね」

しばらく私たちは、そうやって抱き合っていた。でもやがて、論理の両手が私のセーラーの襟の下に潜っていき、ブラジャー越しに私の乳首を揉み始めた。

「あっ、あぁん!論理、なにするの…」

「愛したい。がんばっている文香を、愛したいんだ!」

論理はそう言うと、素早く手を動かし、セーラーの裾の下から手を入れて、私の胸を鷲つかみにした。乳首がブラジャーから漏れる。すかさず、その指が乳首を摘んだ。

「あうぅっ!論理、ダメだよこんなところでっ…!」

「心配ない。こんな時刻だ。誰も来やしないさ」

論理の指が、私の乳首をさらに弄ぶ。時に優しく、時につねりあげるくらい痛く。

「うぐぅっ!…論理、そんなことしたら…私、その気になっちゃう…っ!」

「大いになってくれ」

あっという間に、論理は私のスカートをめくりあげ、濡れたショーツに触った。

「文香、こんなに濡れて…その気になっちゃうどころじゃないじゃないか」

論理の指が動き、ショーツをずらす。次の瞬間には、論理の指は私のおまんこの中にあった。

「あっ!あああぁっ!論理、やめてっ…ダメだよぉ…んぁっ!」

論理は返事代わりに、おまんこの中の指を、ピストン運動させた。

「あんっ!あぁあんっ!ああぁぁっん!」

音楽室に、私の淫らな声が響き渡る。こんなところでえっちなことするなんて…いつも、私たちが歌っているこの場所で、こんな声を出すなんて…でも、それが燃え立つ。私は、一層感じてしまう。立っていられなくなった私は倒れそうになり、思わずそばにあったピアノの鍵盤の上に手をついた。ガーン!と、すごい音が音楽室に鳴り響く。論理はその音を聞いて、何か思いついたように、ニヤリと笑った。

「文香、その鍵盤の上に腰掛けることできる?」

「えっ⁉︎腰掛けるの?」

「なんとかできそうなら、座ってみて」

私は、言われるがままに、鍵盤の上に座ってみた。ボロローン、と、音が鳴る。

「よし、じゃあ、おまんこを見せて」

「えっ、そんな…こんなところで…嫌だよぉ」

「大人しく言う通りにしなさい」

命令形に弱い私。私はためらいながらも、大きく股を開いた。するとまた、ポロロン、と、音が鳴った。論理は、ズボンのチャックを下ろし、中から、あの二〇センチを取り出した。

「こんなにも、こんなにも、文香を愛している」

「論理…私も、論理を愛してる。だから、こんなにびしょびしょだよ…」

「文香の中に入っていいか?」

「いいよ…!」

私は、一層、股を開いてみせた。それに合わせて、ピアノが鳴る。私たちの、愛の伴奏だ。論理はポケットからコンドームを取り出して、素早く装着した。そして、私のショーツをずらすと、私の中に力強く入ってきた。

「はぁああんっ!論理ぃっ!」

私は、思わず仰け反った。それにつられて、ピアノが、ポロポロン、と、鳴る。論理に突かれ、仰け反る。ポロポロン。突かれ、仰け反る。ポロポロン。その旋律に導かれ、私は喘ぎ、段々と昇っていった。

「文香ぁっ!あうっ!文香ぁぁっっ!」

「論理ぃっ!あぁぁぁっっ!論理ぃぃっっ!」

一段と高まる愛の伴奏。その中で、私たちは果てた。


次の日の部活は、私一人気まずい気持ちで練習をしていた。今、あのピアノを弾いてる、中小路(なかこうじ)さんにも、他のみんなにも、昨日のことは決して言えない。でも、そんな背徳感が、心地よかった。

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