第3話 核心
田島がホワイト案件の核心に迫るほど、彼の身辺に不穏な影がちらつくようになった。ある夜、都内の静かなバーで調査の糸口を探していた田島に、一人の男が声をかけてきた。落ち着いた低い声で話しかけてきたその男は、洗練されたスーツを纏い、どこか鋭い目つきで田島を見つめている。
「田島さんですね?お話、よろしいですか?」
その男は自信たっぷりに微笑み、名刺を差し出してきた。名刺には「近藤勇」という名前が記されていた。表向きは実業家の肩書を持つが、田島は瞬時にこの男がただのビジネスマンではないことを直感した。彼の態度には、普通の人間が持つにはあまりにも洗練されすぎた雰囲気があった。
バーの奥まった席に移動すると、近藤は静かに話し始めた。
「ホワイト案件について、何か興味を持っているようですね。私も多少の知識があるので、あなたの調査に協力できるかもしれません」
田島はその言葉に疑念を抱いた。どうしてこの男が、自分が進めている極秘の案件について知っているのか。そして、彼が情報を提供するとして、何の見返りがあるのか。
「近藤さん、どうして私に協力しようと?何か意図があるのでは?」
近藤は田島の問いかけに穏やかに微笑んだ。だが、その瞳には冷徹さが覗いている。
「私はただ、真実を明るみに出すために動いているだけです。ホワイト案件に関わるLCEインターナショナルの裏には、大きな利権が絡んでいます。あなたが一人で全てを背負うには、少々荷が重いでしょう?」
田島は、彼の言葉の裏に潜む狙いを探ろうとしたが、その眼差しからは何も読み取れなかった。だが、一つだけ確信できるのは、近藤の言葉には信憑性があるということだ。
「わかりました。あなたの協力はありがたい。しかし、私もただの人形になるつもりはありません。お互いに得られるものがある関係であってほしい」
近藤はその返答に満足したように頷き、スーツの内ポケットから一枚の書類を取り出した。それはLCEインターナショナルの内部資料で、資金の流れが詳細に記されているものだった。
近藤が差し出した資料には、LCEインターナショナルといくつかのペーパーカンパニーが繋がっている証拠が記されていた。それは、資金洗浄や不正取引の証拠を網羅した貴重な情報だった。
「この資料を使えば、LCEインターナショナルの裏の動きがはっきりと見えるでしょう。ただ、注意して扱ってください。この情報は非常に危険な代物です。扱い方を間違えれば、命の保証はありません」
田島は緊張感を覚えながらも、この資料が自分の調査における重要な鍵になると確信した。だが、その一方で、近藤がなぜこんな資料を所持しているのか疑問が湧いた。
「近藤さん、あなたの目的は一体何なのです?これだけの情報をどうやって手に入れたのか…」
近藤は微笑を浮かべつつ、静かに答えた。
「私も、個人的な理由でLCEインターナショナルに関心があるだけです。あなたの調査が成功すれば、私にも恩恵があるというわけです」
田島はその答えに納得することはできなかったが、今はこの協力を受け入れるしかないと感じた。そして、彼と近藤はホワイト案件の真相を暴くため、危険な協力関係を築くこととなった。
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