いたづら
雛形 絢尊
第1話
またしてもチャイムが鳴った。
子供のいたずらにしては程が過ぎていると、
私は思った。
朝の9時頃から何度も何度も
チャイムが鳴らされている。
妙なのは録画カメラの映像には
一度も姿が映っていない。
ただ姿のない、沿道が写っている。
今日はハロウィンということに
気がついたのは、
テレビのワイドショーの声である。
そして再び、チャイムが鳴った。
私はそのまま、
カーテンの隙間から窓の外を見る。
姿はない。
このままずっと
何度も何度も鳴らされてたまるかと、
私は思った。
鳴った。
また鳴った。
頭を抱えて、苛々するほど鳴らされ続ける。
ああ、もううるさい
うるさいうるさいうるさいうるさいうるさい
うるさい!
と私は窓の外へ向けて怒鳴り散らした。
魔女や骸骨のような小細工を
つけた格好をした3人の男の子が立っていた。
こちらの状況にも合わせず、
「お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ」と言う。
仕方ない、と食器棚から
バアムクーヘン等の菓子を渡した。
ありがとうと、彼らは去っていった。
しばらくしたあと、またチャイムが鳴った。
また、彼らのような子供たちだろうと
再び窓の外を見る。
首を左横に曲げる。少年が1人で立っている。
チャイムのボタンを押し
た状態のまま立っている。
何かがおかしいと思ったが、
私は再び外に出た。
茶菓子を持って。
彼の顔は後ろを見ているようだ。
そのままの状態でこちらに顔を向ける。
機械のようにこちらに顔を向ける。
その顔はまさに鬼の形相だった。
交互に足踏みしこちらへ向かってくる。
首が左横にあるせいか、
円を描くように彼は歩く。
よーー
よーーーよーーーよよーよーーよよーー
と彼は意味不明な言葉をずっと言い続ける。
よーよよよーーーよーよーよーー
ぱしゃん
私の眼の裏には染みのような何かが映る。
それは彼であり、彼であったもの。
いたづら 雛形 絢尊 @kensonhina
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