第29話
この身体は動けて楽しいや。けど、少し寒いかな。
少し遠くの方で影のようなモノが動いていた。
ドロドロとしたアメーバのような見た目だった。
少年は息を飲んだ。
玉は赤い剣になった。
赤い血のような美しい剣だ。
「なにこれ、かっこいいじゃん」
少年は剣から影に視線を移す。
「これで倒せってことかな」
少年は再び笑った。
はしゃいでいた。
走って、不気味な影に向かっていった。
影に斬りつけて。
引き裂いて。
二つにして。
剣を振った。振った。振った。
「あははは」
見るとまだ影がうようよとしている。
少年は走りだした。
楽しくて仕方がなさそうな顔をしていた。
律は遠くの家の屋根の上から少年の様子を見ていた。
「すごいな、来てすぐに戦えるんだ。しかも楽しそうにしてる」
大抵の人間はここに来たら、逃げるだけだ。逃げて、絶望して、悲観して、拒絶して、それからやっと戦うか、諦めるかを選択する。彼は例外だった。はじめから影と戦う勇気を持っていた。未知への恐れが無い。
「かなり、変わってるのかなあ、さてさてどんな人なのやら」
律は屋根から屋根を飛んで少年の元に向かうことにした。
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