第25話
沢山泣いた。
あれは幻想だったのだろうか。
死んだりっちゃんに会えたのは夢だったのだろうか。
りっちゃんはあそこにいた。
確かに存在していたんだ。
また、会えたんだ。
「夢でたまるか」
制服のポケットをまさぐった。丸くて硬い感触。
「あった」
夢じゃない。
風が吹いた。
誰かが後ろにいるような気がした。
「りっちゃん?」
振り返る。
誰もいない。
楓は立ち上がり涙を拭いた。手の中にある物を握りしめる。
楓は屋上を後にした。
少女は教卓の上に座って足をぶらぶらさせていた。
少年は窓から上半身を出してぼーっと外を見ている。
「ん?」
少女が手を見ると。手が透明な光になっていた。少女はニッと笑った。
「一抜けピ」
そう言うと机から降りて、教室の戸に手をかけた。
「よかったな、あがれて」
少年は振り返らずに手を振った。
「んじゃ、あっちでまたね」
「おう、そのうちなあ」
少女は顔をほころばせて教室を出て行った。
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