その命、あたしによこせ

宮上 想史

第1話

小さな少女二人が手を繋いで歩いていた。

「あ、あっちいこ」

 一人の少女が、向こうを指を差して隣の少女に言った。

「うん」

 隣の少女は笑顔で頷く。

 二人は走りだしていた。

 楽しそうに笑っている。

「私たち最強」

「最強ー」

一人の少女が前にでて、遅れている少女の手を引っ張りながら走っていた。   

「カエちゃん、早いよー」

 少女は一生懸命走っている。

「早く、早くー」

 道ばたに一輪、花が咲いていた。

「お花だ!」

 一足前の少女は手を離して花の咲いている方に向かった。

 手を離された少女は転んでしまった。

「きゃッ」膝が擦りむけて血がでている。

「カエちゃん、待って」

悲しいことに転んだ少女の声は、もう一人の少女には聞こえていないようだった。

 少女は花の前でしゃがんでニッコリと微笑んだ。    

「りっちゃん見て、お花だよ」

 少女は振り返った。

 すると、もう一人の少女が手を伸ばしているのが目に入った。   

 トラックが走っているのも目に入った。

 ブレーキの甲高い音。

 少女は一人ぽつんと立っていた。

 なんの表情も浮かべていなかった。

 顔色は白蝋のように白い。


 少女は、喪服を着ている親と手を繋いでいた。

 黒いスーツの大人達。垂れ込めた空気。

 ただ泣いていた。

 雨が降っている。冷たい雨だ。

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