話題にできない日常たち
岡玲南
第1話 カラダの自撮りがやめられない
多くの人たちと同じく、わたしがスマホで撮る写真の圧倒的大部分は自撮りだ。自分の顔を撮って、一喜一憂する。かなりの頻度で加工して遊ぶ。メイクの実験前に写真でメイクしてみる。本当に顔ばかり撮っている。もちろんこれは自分のための写真だからインスタに出すようなことはしない。
友達と遊びに行った時に撮る写真も、やっぱ自撮りだ。友達と一緒に撮る。友達と撮った写真はインスタのストーリーにアップする。友達との一緒の顔面ショットを後で見返すのも好きだ。
自撮りは顔だけじゃなくて、全身を撮る時もある。そういう時は鏡の助けを借りる。全身鏡にうつった自分を写す。カメラを構える位置にはいろんなバリエーションがあるので、日々、研究する。どの辺あたりにどういう手つきでスマホを構えるかで印象がかなり違う。顔を隠したい時の構えは、一番最初に上手になった。
全身自撮りの場合はインスタにアップしたくなる時がある。そういう時は顔隠し写真。友人たちしか見ない鍵付きストーリーの時は顔見せだったりもする。全身自撮りをインスタに出したくなるのは新しい服を買った時が多い。美容院帰りの日もだいたい自撮りをアップしてしまう。
最近、iPhoneを新しい機種にした。カメラの性能が上がった。気のせいか自撮り写真の自分の顔がきれいな人にみえる。aiが理想的に補正してくれているのだろうか。足とか手だけとか体の部位を写したりしてみた。なかなかいい感じだ。そうやって新しいスマホカメラで自撮りして遊んでいるうちに、今まで自撮りしていない部位を写してみたくなって、服を脱いだ。
鏡に自分の裸を写して、それを自撮り。正面。それから合わせ鏡を使って横、と後ろ姿も。自分の裸のお尻を見るのは初めての体験かもしれない。体をよじって写したので真後ろからじゃないけど、自分の裸の後ろ姿は新鮮だった。しかもカメラの性能のせいか、自分的に結構好きな感じに撮れる。
こうして裸自撮りが病みつきになってしまった。私のはだか、こんなに綺麗だっけ、と思わせてくれる。iPhoneのカメラの味付けがそういう設定なのだろう、きっと。肌の質感とか、本物のわたしより全然いい感じだ。けど、もっとこの部分が細くなりたいとか、若干脂肪を落としたいとか、そういう自分の体の細かいところに対する欲求も出てしまうのでいいことばかりじゃない。
自撮りしたヌード写真をカメラロールで見返していると、なんだか時々興奮してしまうようになった。自分の裸を見慣れていないから、誰か自分じゃない女の子の裸のような気がするからかもしれない。ということは自分が見たいポルノっぽいヌード写真が撮れるということになる。
そういうポーズをして、そういう写真を撮ってみた。そういう写真の場合、自分の顔が見えていない方が興奮できることがわかった。こうして顔なしポルノふうヌード自撮りを撮るのが病みつきになってしまった。そういう写真を自分で撮ることで、欲求不満が解消できるような感じがする。
だれか他の人にもみてもらいたいと思うほどの出来栄えの自撮りエロ写真もいくつも撮れた。本当は友達に見せて、「ほら!すごいエロいでしょ!」と、話題にしたい。けれどそんなのは無理。頭がおかしくなったと思われるのがオチだ。
世の中のみんなはそういう願望ってないのだろうか。私はそういう願望があるということを、こうして最近知ってしまった。毎日、鏡の前で裸になって自撮りするのがやめられない。
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