愛美くんは超鈍感~男女比1対49999の世界に生まれ落ちたボクが政府に過酷な性行為を強要されて真実の愛に目覚めるまで~【カクヨムコン10参加作品】
メアー
第1話 美しい人生よ限りない喜びよ
「愛美慎太郎クン! キミの使命は真の愛する人を見つけ出し、清い恋愛交際の末、濃厚な性行為により子孫を残すことにある! さあ、誰でもいいぞ! なんなら私でも構わない! 政府により正式に認められているキミであれば、何人でも孕ませ放題だ! 覚悟したまえ! これから私とキミは恋仲となるのだ!」
白衣を纏った美少女JKによる跳躍強襲が行われた。僕の制服は懇切丁寧に剥ぎ取られ、すぐさま上半身が露わになる。必死に抵抗するも、その力は強い。
「おぎゃーっ! きらら先輩! 気を確かに! おぉおっ! すげぇ力だ!」
「すまない愛美慎太郎クン! 私も特待生の身でね、半年に一度の研究成果を上に報告しなければならないんだ! なぁに、この研究室には誰も来ない! それに天井のシミも沢山ある! 数えているうちにすべてが終了しているよ!」
非常に自分勝手な理論を展開し、襲い掛かってくるきらら先輩だが、このままやられっぱなしと云う訳にはいかない。多少怪我も込みで力を籠めるがビクともしない。
「嘘でしょ⁉ 僕はベンチプレス200キロの記録保持者ですよ⁉ なんでこんなに押し負けてるの⁉」
「キミの力は力学を完全に使いこなしていない! 自らの才能であるフィジカル頼りのものに過ぎないのだよ! 観念したまえ! そうだ! キスをしてやろう! どうだい⁉ 美少女天才科学者JKからの濃厚な接吻だよ? 自慢じゃあないが私にはファンクラブだって存在する! ファンが知ったら羨ましがるだろうねぇ!」
「それなら猶更、ファンの為に清らかでいてくださいよ! うおぉお! 強いっ!」
「ハハハハハ! なかなか粘るじゃあないか! 多少強引だが、私の様な美少女であれば言わずもがな、濃厚な遺伝子が排出されるだろう! キミと私の子だ! さぞかし可愛いベイビーが生まれて来る事だろうねぇ!」
「うわーーーっ! 誰かーーー! 助けてくれーーー!」
僕がどうしてこの様な仕打ちに見舞われているのか、その理由は少し遡る――
――気持ちが昂り胸が躍る。今日は待ちに待った登校日の初日!
男だらけの環境で生まれ育った僕は、憧れだった共学への編入試験をクリアし、晴れて都会の学校で青春を謳歌する事が許されたのだ。
出来立ての学生服はまだ身体には馴染まず、新鮮味を感じる。鍛え上げられた肉体に合わせて仕立てた為、通常の八倍以上の生地を使用したと、顔馴染みの親父さんは言っていた。デザインは親父さんの時代に流行ったスタイルで短ランというらしい。
島で過ごした地獄の日々……。思い出すだけでも血を吐きそうだ。苦楽を共にした指ぬきグローブには、血と汗と涙が深く染み込んでいる。
これからは男だらけのむさ苦しい環境から解放されて、バラ色の人生が始まる。
あぁ、どんなことが待ち受けているんだろう。彼女を作る事が出来たら最高だ。放課後に買い食いをしたり、休日は映画館でデートなんかもしたい!
今思えば女の子とのふれあいなんか、近所のおばちゃんやお婆ちゃんばかりだった。幼馴染の女の子はいたけど、僕よりも数年早く島を出ている。今頃は青春を存分に謳歌しているだろう。
学校までの道のりも、自然と足取りが軽くなるのを感じる。小高い丘の上に存在する、政府認定の男女共同学校【
早い時間に登校してきたとはいえ、所々に女子生徒の姿が見える。流石は桃郷! 女の子も美人が多い! いや、遺伝子学が進歩してから大体の子は平均的に美人なんだっけか? 薄っすらと歴史で学んだ記憶がある。
なにせ都会の学校を受験する為に、必至で勉強をしてきたものだから、ありとあらゆる知識が無理矢理脳に詰め込まれている。僕本来の能力は特出する程優れたものはない。かなり背伸びをした行動だっただろう。
強いて長所をあげるとすれば、父親譲りの高身長185センチと、やたらと丈夫な身体だろう。風邪は愚か、大きな怪我もしたことがない。
これから起こるであろう、幸せな日々を思い描き、脳の注意力が散漫していると、突如として身体に衝撃が走った。
「きゃあっ!」
その短い悲鳴を聞き、咄嗟に身体が動く。僕と衝突し倒れそうになったのは、可憐な女の子だった。急な事であったが為に彼女を強く抱きしめる形で支えてしまった。それはまるで、おとぎ話に出てくる王子が、お姫様を抱きとめるかの様な形だった。
「ごめんなさい、怪我はありませんか?」
なにせ185センチの肉体だ、華奢な女の子を跳ね飛ばしたとなれば大問題となる。登校日初日から大事件を起こす所だった。――それにしても、女の子ってこんなにも暖かくて柔らかいのか……。まるで干したてのお
「あ……あの……!」
思わず抱きしめてしまった彼女は、声を搾りだす様に放った。それはとてもか弱く、どこか懐かしい感覚がした。
「あぁっ! すみません! 放しますね!」
しくじった……! 都会ではこういうのは痴漢と間違われるってお父さんが言ってた! 注意していた筈なのに、警察沙汰なんて絶対にダメだ! 全力で謝ろう!
「ぶつかった事は、謝りまぁす! どうか、警察だけはご勘弁をっ……!」
「……その顔とグローブ……。慎太郎くん……? 【泣き虫しんちゃん】⁉」
「その呼び名を知っているという事は……! えっ⁉ あゆみちゃんなの⁉」
「えーっ⁉ 本当にしんちゃんなの⁉ 嘘でしょ⁉ でっかくなったねぇ!」
僕の認識に間違いがなければ、彼女は同郷の幼馴染だ。
【御木本あゆみ】幼少期から小学四年生まで、島で一緒に過ごしたが、両親の都合で転校した女の子だ。急な事で連絡先も分からないまま、離ればなれになってしまったが、僕の大事な友達の一人だ。
見た目はすっかり年頃の女の子になっており、トレードマークだったサイドテールは少し長くなっていた。胸元は開きスカートは短く、オシャレに敏感なギャルっぽい着こなしをしている。身だしなみは整っている筈なのに、所々のボリュームが穏やかではないため、とにかく迫力がすごい……! 何処がとは言わないけれど……!
「こんなにいい男になって……! アタシを追って来てくれたって事にしていい⁉」
「相変わらず冗談が上手いなぁ、あゆみちゃんは……。籠島から桃郷まで追ってくるなんてストーカーのレベルを超越しているよ。移動だって大変だし」
「なんにせよ、こんなとこで突っ立ってる訳にもいかないわ、学校行くんでしょ⁉ ほら、一緒に行こう!」
あゆみちゃんは、僕の手を取り歩き出した。いやいや、もう高校生だっての! そう思いつつも、懐かしさのあまり、手は繋いだままとなってしまう。
「懐かしいなぁ、子供の頃はよくこうやって、手を繋いで登下校したよね」
「えぇ~? しんちゃんアタシの事ちゃんと憶えてるじゃ~ん♡ もしかして、初恋の女の子だったぁ?」
えぇっ⁉ なんでそんな事聞いてくるの⁉ 時々あゆみちゃんは鋭い事を口にするから本当にドキドキしちゃうよ……。
「どう答えても僕の立場は危ぶまれそうだから、ノーコメントで!」
「教えてよ~! アタシへの恋心♡ 好きって言ってみ?」
うわ~! なんか昔よりもすごくグイグイくるぞ~⁉ そりゃあ女の子の友達はあゆみちゃんしか知らないし、好きだったことは確かだけど、それは友達としての好きであって、恋心がどうとか言う訳じゃ……!
答えに困っていると、あゆみちゃんは嬉しそうに微笑む。
「しんちゃんと、また会えて嬉しい♡」
どうしよう! 好きになっちゃいそう! 助けてお父さん! 多分、今の顔めちゃくちゃ赤くなってる!
「へぇ~♡……これならすぐに……♡」
あゆみちゃんが何かを言いかけた時、校門の前で風紀委員と思わしき女子生徒に声を掛けられた。
「あなた達! 何をしているの⁉ こんな公衆の面前で……!」
「えぇ⁉ なんですか⁉ 僕、何かしちゃいましたか⁉」
ここまで大きな声で注意される様な覚えはない。僕は、この女子生徒が何に対して注意を促しているのか見当がつかず、対応に困ってしまった。
「ちょっとぉ、深雪ちゃん。アタシの大事な友達に難癖付けないでくれるぅ?」
「上級生相手には先輩を付けなさい、御木本さん……。難癖ではありません……! それに、注意なら御木本さん、あなたも対象ですよ! 男女の過度な接触は、他の生徒に悪影響を及ぼします。即刻その……結合を解除してくださいっ……!」
みゆきちゃん、と呼ばれた女子生徒が示しているのは、文脈からして僕とあゆみちゃんが手を繋いでいたことを指すのだろう。高校生にもなって手を繋ぐことがダメだなんて、随分と厳しい学校なんだな……。
僕は何処か納得してしまい、あゆみちゃんから手を放そうとした。
「あっ……!」
酷く残念そうに、離れた手を見つめるあゆみちゃん。幼馴染との再会で気分が小学生に戻り、何処かはしゃいでしまったのだろう。自分も同じだ。高校生にもなって小学生みたいなことをしてしまった。反省するべきかもしれない。
「それでいいのです。男女の関係はつつましく、清らかでなければなりません。特に、愛美クンの様な特別プログラムで選ばれた生徒であれば特に……!」
名前が知られている⁉ あぁ、そうか政府公認の特別プログラムだもんな。寮費や学費を始めとしたあらゆる諸経費が無料になる仕組みだ、広く知られていてもおかしくはない。
「ウェえっ⁉ しんちゃん特待生なの⁉ 算数もアタシより出来なかったのに⁉」
「ありとあらゆる勉強法で詰め込んだんだ。もともと空っぽだったからね!」
渾身の自虐ギャグが炸裂したが、ウケはそれ程良くなかった。
「ふふ、流石は特待生、謙虚で素晴らしいわ。自己紹介はまた、時を改めてさせて頂くわね。さぁ、あなた達新入生にはやる事が多いわよ。早くクラスを確認して教室に向かいなさい。それ程余裕はないわよ」
みゆきさんと呼ばれた女性はそう言って、颯爽と校内へと消えていった。言われてみればそうだ、早くクラスを確認して入学式に向かわなくては! 特待生は新入生代表のスピーチが義務付けられている。原稿もバッチリ暗記してきたし、メモもある。
「それじゃあ行こうかしんちゃん。もう一回手を繋ぐ?」
「悪目立ちするからやめておくよ。これでも一応特待生だし」
「なーんだ、つまんないの。照れてるしんちゃん、もっと見たかったなぁ~♡」
なんでそんな可愛い声を出すの? 好きになっちゃうよ⁉
僕の心は、幼馴染との再会で激しく動揺していた。
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