腐れ外道の城
長野ゴリラ
第1話井藤砦1
「いけぇぇい!」
黒田三郎兵衛則久が絶叫ともいえる雄叫びを挙げると、それを合図に雑兵や侍が小高い丘の山頂を目指し、斜面を駆け上がって行く。
斜面の先、標高三十メートルほどの頂上には砦が築かれている。
砦は簡易的な構造ではあるが、丘の稜線をなぞるように板塀が打ち付けられていり、その西端と東端に物見台があって、そのほぼ中心部に櫓組の建造物がある急ごしらえとはいえ、かなり本格的な砦である。
それを目指し男どもは自らと周囲を鼓舞するように叫び、吠え、息を弾ませ砦を攻略せんと登って行く。
「怯むな行け!行けぇ!」
この砦奪取を任された総大将、黒田三郎兵衛則久は小柄な躯の底から野獣のような声を発しつつ、緩やかな斜面までは馬上で指揮を執り、急な上り坂にさしかかると下馬馬し、自らも前線に駆けだして行った。
「三郎兵衛様、おやめ下され!大将が撃たれてはどうにもなりませぬぞ!」
三郎兵衛の側近、栗原十吉がたしなめるが、三郎兵衛は意に介さず、指揮棒を振るい、斜面を進む。
その姿に奮い立ち、周りの兵が我先に丘を登って行く。
斜面がもう一段階急になり、弓矢の射程内に入ると、三郎兵衛は兵の中段まで下がり前線に指示を出した。
「薪枝を前へ!」
その指示で、「薪枝」と呼ばれる干した藁に細い木の枝を巻き付け、人一人が隠れるほどの太さにした「盾」が前線に運ばれ、それが整列し、動く城壁となって緩やかに兵団は登頂して行く。
その間も敵からの矢玉は雷雨のように、三郎兵衛たちに降り注いでくる。
このような場合、攻める側の三郎兵衛側は圧倒的不利である。
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