【選択肢:リオンとミチルについていく】
リオンとミチルが向かう先にあった大型書店は、ファッションビルの中でも閑静な空気に包まれていた。会話を交わす人々も言葉少なで、興味深そうに文庫本を立ち読みをする人もいる。店頭は「読書の秋コーナー」と題した名作とベストセラーのコーナーと、今週の売り上げランキングで豊かに飾られていた。
「じゃあ、私は参考書買うから」
足早にそそくさとミチルが遠ざかる。売り場も広いため、あっという間に雰囲気のある立ち姿は書棚に紛れて見えなくなってしまった。
「ああ……未散さん……」
「仕方ないと思うよ。鳴護さん、かなりの一匹狼気質だから……」
フォローするリオンは特にこれといった買い物はないのか、新刊コーナーを中心に彷徨い歩いていた。
『リオンは新刊本、気になる?』
「うーん、どうだろう……僕、読んでるのが文芸本ってだけで、あんまり共通点がなくて……図書室で借りるだけで満足しちゃうことの方が多いかも」
ミチルを探して立ち読みの人をかき分けていくトキオを尻目に、リオンがふと、とある書籍のコーナーの前で立ち止まった。ジャンルの看板をユウが読み上げる。
『……イラスト・デザイン?』
「……あ、」
自分が立ち止まったのも思いがけなかったようで、リオン自身も目を白黒させている。
【選択肢】
『こういうの好きなの?』
『リオンも絵を描いたりするの?』
「あ、いや、えっと……その……」
絵に描いたようなしどろもどろで、言葉尻をすぼめていく。次に飛び出した言葉は、ユウにとって少々衝撃的なものだった。
「ち、違う――全然、好きじゃない」
『!』
リオンの口から否定的な文言が飛び出すとは思いもせず、今度はユウが目を白黒させてしまった。それを見てはっと我に返ったのか、「いや、えっと、た、たまたま目に留まっただけだから」とリオンが必死に取り繕う。
「……ごめん、侑。止まってるのもなんだし、無弓くんを探しに行こうか。鳴護さんとも一緒にいるだろうから」
『うん。そうだね』
なるだけ平静を装ってユウも返答したが、関係はギクシャクしてしまった。
『…………』
……どうしてリオンがイラスト・デザインに対してあれほど拒絶反応を示したのか、ユウには分からない。深く訊く勇気も持てないまま早歩きで参考書コーナーへと向かい、トキオとミチルに合流した。トキオはいつもの調子で一方的にミチルへとアピールしていたらしく、その賑やかさに紛れて一連の出来事は有耶無耶となり、リオンも普段どおりの落ち着きを取り戻していった。
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