仮装パーティー
ぽぽ
第1話
「ハッピーハロウィーン!」
六人の明るい声が部屋中に響く。ここはその六人のうちの一人の家。広いリビングには大きな机と大量の飲食物がある。
六人のうち五人はそれぞれコスプレをしており、顔にダースベイダーのマスクを被っていたり、Mの文字が入った帽子とオーバーオールという服装の者もいる。全員仮面やマスクを被っていたり厚化粧をしており、みんな同じような体格であることも相まって誰が誰なのかを判別することは困難になっていた。
そんな服装をしている理由はもちろん、今日がハロウィンだからだ。みな、それぞれの恰好で集まりパーティーをしようということになったのだ。
「いやー、それにしてもみんなクオリティ高いね。誰が誰だか分からないや」
ダースベイダーが言った。その声にはボイスチェンジャーがかかっている。
「それじゃあさ、みんなで誰が誰だか当てようよ。全員ボイチェンかけてるみたいだから声からもわかんないでしょ」
ジェイソンの仮面にミニチュアのチェーンソーを持った者が言った。やはりその声にもボイスチェンジャーがかかっている。
「おお、いいねそれ。じゃあ全員別の呼び名が無いとね」
豚のマスクを被った者が言った。これはたしかソウという映画に出てくるキャラクターのはずだ。やはりボイスチェンジャー。
「いやー……ごめんね。俺だけ普通の恰好で来ちゃって」
俺は言った。その服装はトレーナーにジーパンである。ボイスチェンジャーもかかっていない。
今日はコスプレ衣装を用意できなかった。という体できている。
「いや?よくできたコスプレだと思うよ?」
ダースベイダーが言い、おや?と俺は思った。もしかしてバレているのだろうか。
「だよね。ぱっと見気づかなかったもん」
同調する声もある。やはりバレている?
「は?ちょっと、何言ってんだよ。何にも用意できなかったって言ってるだろ?」
俺は慌てて反論した。せっかく用意したものをこうも容易く見破られては面白くない。
「歩く時。君はいつも右足から踏み出してたよね。だけど今は左足からだ」
「だね。それにちょっと内股」
「あと、喋り方もちょっと違う。君はいつも語尾が少しだけ上がる」
歩き方に喋り方……よく見ているな。
「ね。もうバレてんだからさ、その仮面、取ったら?」
そう言われ、俺はしぶしぶ顔面に張り付けていた皮を剥がした。
「やっぱまだダメだったか。もっと観察しなきゃだったな」
俺は反省点を述べた。俺以外の五人の観察眼を見くびっていた。
「いや。でもほんとによくできてたよ。さっき言った二点を直せばもう完璧」
ジェイソンのコスプレをしたやつが言った。
「だけど、もう出来ないんだよな」
そうだ。このコスプレは一回きり。
「この皮は本人のやつだからな。もう死んじゃったから皮を剥げない」
俺は残念に思いながら言った。顔の皮は本人しか持っていない。そのためその本人に化ける際にはとても有用なのだ。
「せっかく体形がそっくりのやつが友人にいたのに、お前らすぐに見破っちゃうんだもんな。他は全員骨格も筋肉の付き方も違うから、新しく似たやつがいなきゃできないんだよな」
「それに、二回目以降だとタネが分かっちゃってるから驚きも少ないしね」
「あーあ。残念だなぁ」
「でも、君のコスプレが一番クオリティ高いんだからさ、来年はもっといいのを期待してるよ」
その言葉に、俺は苦笑しながら頷いた。見破られたのは残念だったが、こうやって褒めてもらえると気分が良い。
来年は、もっと気合を入れるか。俺はそう意気込んだ。
仮装パーティー ぽぽ @popoinu
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