みらいのふくのみらい 阿下潮様

作品URL

https://kakuyomu.jp/works/16817330669236806819



キャッチコピー

糸を撚り合わせ、服を仕立てるように。未来を撚り合わせ、福を仕立てる。


 服が情報へとなり替わる時代。服までデジタルに移行とは、最先端を行き過ぎてもはや光そのものにでもなったかのような錯覚を覚えるほどには、現代からすれば到底届かない時代。

 現代でも、芸能人やアーティストがスポンサー契約をしているアパレルブランドの服を着て、宣伝や広告塔の役割を果たしたりしていますが、最初にしたのはそんなイメージでした。赤ん坊の頃からブランド物の情報的衣服を纏うということは、一般人でも十分に広告塔たりえるのですから。王様は裸だ、なんて言われても良いんです。ちゃんと情報的衣服を纏っているし、なんなら心を裸にできれば、それは素敵な王様に違いありません。

 物理的な重さからは解放されたものの、回線という情報の重さに縛られるとは、なんとも本末転倒というか……。その光ファイバー(情報的衣服の繊維の例え)で以て、コルセットのように締め付ければ、多少はましになるのでしょうか……。

 身の丈に合った服を着るのは大事でも、身に余るサイズの服を着るのは正直いかがなものかと思いましたが、昨今ではオーバーサイズの服をあえて着ることによるオシャレもありますし、一概に否定したものでもないですねぇ。実に興味深いです。

 しかし、単純に服のサイズ=権力という構図は、単純明快であっけらかんと捉えられるものでもなく。自らを大きく見せようとする人々の器の大きさをこそ、是非とも見てみたいと思いました。

 常に最新の情報を手に入れることは現代において、誰よりも一手先手を打ち、誰よりも一歩を出し抜くことができる最強の武器です。袖の下どころか、服から伸びた光ファイバーででもつながっているのでしょう。それもそのはず。

 もはやどこが縫い始めからも分からない、否、縫い目など一切(一糸)存在しない情報的衣服の始まりは、その情報網を文字通り、網のように張り巡らせた結果、いつの間にか縫い始めの位置に戻ってくるころには、星にまで成長していたのですから。

 ところで、この星は一体誰に向けて情報を発信しているのでしょうか。星そのものが広告塔になった今、その情報的衣服の買い手が見つかるとすれば、それはどこかの星の王様なのかもしれないですね。


 人命は何よりも優先されるべき。人々が火星に移住しようとも、誰もが真っ先に自身の命を守らねば、生きている意味を見いだせないです。それと同列に語られる衣食住。中でもとりわけ、気を使わなければいけないのは「衣」。身に纏うことで、自身の気分を上げたり、TPOに合う服装を着たりと、枚挙に暇がありません。そうです、彩りは大事です。

 それはまるで、彩りというオーラを纏っているようで。情報的衣服と同様に一切の重さを感じさせない点に加え、速度低下による重さの心配もなし。それは毎日のお出かけが軽やかになること間違いなし! ですね。

 そんなお手軽さとは裏腹に、確かに自由の幅が広すぎるのも悩みどころではありますね……。( ゚д゚)ハッ! ……なるほど……カメレオンのように周囲に合わせて色を自在に変えれば、引きこもりでも人目を気にせず外出が可能……やったぜ!

 徐々に広がっていくカメレオンブーム。お互いをぎりぎり認知できる程度には他人を知覚できるのは実にありがたいですが、その光景をぼんやりと想像すると、なんだかものすごくシュールな映像が再生されました。『服』は着るものから、『吹く』ものへ。流行り廃りのように、ひゅうと流浪していく……。


 まるで壮大な宇宙旅行をしていたような人類の行きつく先は、母なる大地、地球で。最先端から最先端へ。(表現としてはおかしいですが)まるで、袋小路から袋小路へ。尖りに尖り続けた服というもののレゾンデートルは、つまるところ。やはり、本来のあるべき形に落ち着くのですね。袋小路だけに。そして、服としては絶対に破れないというのもどこか、皮肉めいていますね。

 その、布でできた袋小路は、とても人類全員分の服を作るには足りなくて。愚かにも奪い合い、闘争を続ける人類。こうしてみると、情報的衣服はやはり失敗だったのではと思わざるを得ないと言いますか。情報的衣服から風の服になり、地球に戻ってくればそこには資源が何もない。他ならぬ自分たちが不要とした結果なのですから。

 清廉潔白な心に、着せる服はどこを探してもおそらく見たらないけれど。

 だからこそ、女王様もその娘たちも。皆一様にとびっきりのオシャレを楽しんだのだと思います。そしてその思いが、最後には歴史という糸で編み込まれた、この世に一点しかない、唯一無二の物語(服)として完成されたのですね。

『月』に照らされてきらきらと輝く『糸』で編まれた、ヒルガオの『口』から紡がれる、『月』+『糸』+『口』=『絹』のような、滑からな質感の物語が。

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