わたくし時間共有サービス、時刻差20年 カクヨムSF研@非公式(九頭見 灯火)様
作品URL
https://kakuyomu.jp/works/16817330666746159091
キャッチコピー
時間差を埋めるのは、時間共有サービス。心の隙間を埋めるのは――。
時を乱される=心を乱されると同義のように感じられ、時間がずれるごとに、人と人の境界線までずれていくような。
そんな、どこか疎外感すら抱かせる不安な不穏な世界観が開始数行にして
ぐっと心を掴んで離しません。
ズレは溝になり、差が開き距離が開く。それでも、時刻共有サービスによって、その細い細い糸を手繰りよせ、遥か彼方にいる、相川との糸電話。その糸は時間や年月の壁程度では絶対に切れない縁で撚られているのでしょう。
黒電話のコードを指で弄ぶように、互いの指に絡ませた赤い糸で。
人々の時間のズレを前提とした、システマチックなダイヤの構築はこの世界観ならではですね。
夜空のアルバムに煌々ときらめく思い出を指でなぞれば、淡い記憶とはじける炭酸の刺激。一つだけ割れた卵が、後の衝撃的な事実を暗示しているようで
どうか心までは割れないようにと、ひたすら祈るばかりでした。
ピンと張られた糸電話。最初は、絶対に切れないと信じていましたが、D領域という絶望を前にしては、あまりにも無力……。
そして、音もなくぷつんと切れる赤い糸……。
音もなくぷつん なんて矛盾を孕んでいても、きっとこのズレに違和感は訪れないと思います。
……と思っていたら、希望の光が差してきた……。
一度切れてしまった結び目は、その長さこそ短くなれど、結び目の分だけより強固なものとなって。さらに今回はたくさんの時間軸の香織が撚られた糸だけに、その想いも載せた、まるで綱のような運命の糸。……これも矛盾して、ズレていますが
そんなことは、些事でしょう。誰かが匙を投げても、これは二人の問題なのですから。
読み終えた時、胸がすくような感覚と、果てない宇宙旅行を終えて地球に戻ってきて、時差というズレに狼狽しているような気持ちになりました。
今こそ、時間共有サービスを使う時かもしれません。
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