秋の夜明けに若葉が芽吹く
紀乃
・秋の足音(2025/1/4に追加)
二十世紀のはじめ。世界中を巻き込んだ〈大戦争〉がおわって、もう五年になる。
多くの国では、四年つづいた戦争の傷がまだ治っていない。しかし世界の片隅にあって本土が戦火をまぬがれた〈王国〉は、戦勝国の恩恵を一身に浴びることになった。
戦争で弱った国々へ食料、医薬品、船などを売り、あっという間に世界の経済大国となった。
都市では華やかな市民文化が芽吹いた。徒弟や給仕でさえ柔らかいパンを食べ、質のいい服を着て、家にラジオを置き、休日には避暑地でバカンスを楽しむようになった。
〈王国〉北西部の山地。シノト山脈からヒノキを切り出す木こりと、それをラフラ川に流す筏師が細々と暮らしていたソハの町も、恩恵のしぶきを浴びている。
この山間の田舎町にはじめての映画館が建ち、汽車の本数が増え、娘たちは都会の化粧品を手に入れられるようになった。
建材輸出の増加で活気が満ちるソハの町にはいま、秋の足音が聞こえてきている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます