星の砂-39

「エクトルのことだね。ゼナイドの悩み」



 青い太陽が落ちかける頃、働き終えたトウナが部屋でぼんやりしていたゼナイドに言う。エクトルはどうやらふたりに意思を伝えたらしい。


 トウナはゼナイドの隣へ、寝台に腰掛ける。「私、嫌だったよ。エクトルが星の砂探しに外に出たの」


 ゼナイドの中でトウナの微かな冷たさの原因がわかった。けれど、今のトウナにそれはない。



「嫌だったのは、エクトルが危ない目にあうから」

「実際そうだった」

「でも、エクトルがそれを望むなら。私、何も言えない」



 トウナを見ると、なんとも言えぬほほえみをしていた。「嫌なのは嫌だけど。エクトルがそうしたいなら、私、止められないのかなって」


 それから、少しの静寂。



「父さんはね、レッハルトの騎士団から、送迎してもらえるの。メルデンっていって、リルレからは離れてるんだけど。その後は、自力。それこそ、ゼナイドみたいに旅みたいな」



 レッハルトの研究機関に属するには、官憲騎士団か魔法師団、どちらかに所属する必要があるという。つまり、ディリガにはある程度自衛ができる能力があるのだ。



「じゃあ父さんといっしょに、って思った。けどそれは、エクトルは嫌だって言う。色々見て回りたいんだって。ディリガはレッハルト一直線だから。それなら、ひとりで出てやるって、急にわがまま。意地、張っちゃってるの」

「ひとりはやめたほうがいい」

「でしょ? だからたちまちひとりで行くなら、ゼナイドと行くしかない」

「でも」

「ゼナイドは、悩んでる。考えさせてって言われた」



 何がなんでも退かない様子のエクトルに、ディリガとトウナは条件を出した。


 一、ゼナイドを納得させた上で、旅に同行する。「大前提だね」


 二、ローハの店でのエクトルの代わりの働き手を見つける。「リヤさんの代わりに、今でも時々ゼナイド、出ることになってるから。そんな状況で穴は開けられないよね」


 この2点を、ゼナイドの旅立ちまでに達成できればいい。「手紙に関わらず、ね。行き先分かれば、手紙はそこへ送り直せるもの」



「少し、難しいかもしれないな」

「今エクトルはローハさんの元、行っちゃった」



 早い、と思わず苦笑する。



「ちょっと、いじわるかな。でもこれくらいさせてほしい」



 トウナも苦笑しながら返す。「ごめんね、ゼナイド。止められないと思ってるのに、止めたいみたい」

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