星の砂-4
「嬢ちゃん、随分珍しい髪色してんな。どっから来てんだ?」「ひとりで? 大したもんだなァ」「俺達よ、旅人サンの話、いろいろ聞くのが好きでよ…」
早速客中へ歓迎されたようだった。銀髪の旅人は随分整った顔立ちをしている。それもあって、男ばかりの客達はかなり嬉しそうな表情ばかりである。
「リヤ! なんか、うめぇジュースでも寄越してくれや。ゼナイドちゃん、酒が飲めないらしいから。俺にツケとけ!」
「そんな。それは申し訳ない」
「イイんだよ! 歓迎の意と思って、さあ何食べよう? ここの料理は美味いぞう〜?」
「そういってツケいくらたまってると思ってんですか〜?」
「今度返す!」
「なら私が」
「ゼナイドちゃんからは「旅人さんからは」いらない!」
エクトル自身の経験からも言えるが、リルレの町民は、外部の者へ優しく、あたたかい。エクトルが、ディリガに連れられて始めてリルレへ来た時をうっすら思い出す。
「ディリガが引き取るって? 大丈夫かよ〜」
「トウナにとっていいんじゃねぇか? おっさんとふたりよりは、同世代ひとりいても」
「ははは! ディリガよりしっかりしてそうだしな」
トウナの母、つまりディリガの妻は、ディリガの研究熱心が過ぎる態度にしびれを切らして出て行ったらしい。トウナは、父の研究話が嫌いではないという理由で、ディリガの元に残った。
実際それから12年のうち、3年ほど全くディリガが帰って来ないことがあった。エクトルがいるからだと思うのだが、たった一人の幼い子供をそんなに家に置き去りにするのはいかがなものか。
しかしエクトルとトウナはディリガのことは好きだ。研究、というか実際見てきたことを話すディリガの姿は、少年のようでとても楽しそうだった。
エクトルはその話を聞いていると、少しでも世界をしれた気がして嬉しかった。同時に憧れも抱く。
「エクトル! なんか、飯!」
「雑なご注文ですこと」
とりあえず、今ある残りの材料からできる料理を考える。メニューにはないものだが、別に良かった。エクトルなりの、歓迎の意ということにしておこう。
さっと葉野菜たちを炒めながら、肉を別で焼く。同時にドリア作成に手をかける。野菜の火加減をみているとき、店の裏口が開く音がした。
振り返るとリヤの妻イーリアが、赤ん坊といっしょにいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます