銀の剣士

殿田出典


 ひとり、銀の龍が天へ昇った時、



 天に住まう銀の生き物は、称賛のように、歓迎の意を示すように、それぞれが舞う。



 翼はかつてない大風を起こし、



 涙は大雨として落ち、



 咆哮は雷を呼ぶ。



 ひとり、銀の龍が天へ昇った時、



 谷にあった集落がひとつ潰れた。



 ひとり、銀の龍が天へ昇った時、



 大雨と暴風の中、故郷から連れ出された少年は故郷を失った。



 少し前まで、過ごしていた場所だった。



 ひとり、銀の龍が天へ昇った時、



 母親が雷雲の濃い星の時に眠る少女の夢に現れた。



 少女は夢の中で約束をした。

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