とある男子大学生の話「リモート会議」

 俺は○○。○○大学の三年、理学部生物学専攻です。○○って呼んでね。

 今から話すのは、俺が遭遇したマジで怖い話ね。ノンフィクション……つまり、体験談なんで、そこんとこよろしく。


 うーん、あれは数日前だっかな。

 サークルのメンツとズームを使って、来月行う予定の募金活動について話し合ったんだ。その時、集まったメンバーは俺を含めて七人。あ、ご察しの通り過疎サークルなんだよね。


 全員が会議に参加して、いざ話し合おうって、ときに突然音声が途切れ始めたの。


『……さ……きこえます……か?』


 プツプツと音声が切れて、みんなの声があんまり聞こえなくなった。その日は、天気が悪かったから、たぶん電波が悪かったのかな。ほら電波って水に当たると吸収されて、悪くなるじゃん?


 そんで、とりあえずWiFiを繋ぎ直してみたの。そしたら余計に電波が悪くなったみたいで、今度は映像が砂嵐になり始めてさ。


 あの時はマジで焦ったわ。

 そっからラインでサークルのメンバーに、事情を話して、ズームを閉じようとしたの。

 俺の場合、PC版のズームを使っているから、まずはPCを再起動してみて――それでも無理ならスマホ版に変えるつもりだった――。


 画面の右上にある‪✕‬ボタンを押そうとした、その時――。


『……聞こえる?』


 PCのスピーカーから声が聞こえてきた。

 今度は、音が途切れていない普通の声が語りかけてきたんだ。

 表示されていた名前はたしか……黒宮怜。


「お、聞こえる。聞こえる。やっと繋がって安心した」


 笑いながら怜に話しかけると、彼はこう言ったんだ。


『聞こえるんだ。残念』


 意味わかんないだろ?

 しかも、怜ってヤツ真顔で淡々と話続けてな……。


『す、すっ、全てを疑え。日常に現実が侵食している。目を凝らせ。真実を見ろ。鬼になる前に』


「何言っているんだお前ッ!」


 こっちが言い返すと画面の砂嵐が消えて、代わりに首を傾げた、みんなの姿が映った。


『○○。急に叫んでどうしたんだ?』


「だって、さっき怜が……」


『怜ってなんだ?』


「サークルのメンバーだよ」


『そんな名前のメンバーいないだろ』


「言われてみれば、そうだな……」


 今思えばウチのサークルは七人だ。知らないヤツなんているわけ……。


『でも会ったことかある気がする。』


 


 

 

 


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