蛇ノ章 くねくね・スネーク

インタビュー記事「■■■■中学校で行方不明事件」

*2022年、3月……県の■■■■中学校に在学していた女子生徒Aさん(15)が行方不明になった。これは事件があった日、Aさんとすごしていた生徒三人へのインタビュー記事である。






【Kさん】


――Aさんとは、どのような関係でしたか?


K「Aちゃんは同じ委員会の知り合いです。小学生の時は、それなりに仲が良かったですが、今はクラスが違うので普段関わる機会はありません。あの日は、放課後空き教室に集まっていました」


――Kさんが抱く、Aさんへの印象は?


K「とにかく真面目な子でしたね。私とAちゃんは図書委員でしたけど――Aちゃんは当番の時、いつも貸し出しカウンターで勉強していました。あー、仕事はちゃんとやってますよ。ただ、図書室に来る生徒が少ないから実質、暇なんですよ」


――Aさんが行方不明になった日、何がありましたか?


K「Aちゃんの提案で『鬼送り』という遊び……というか、おまじないをやりました。『鬼送り』は■■■■だと有名な降霊術の類です」


――『鬼戻し』について、詳しく教えて頂けませんか?


K「内容はコックリさんやウィジャボードと、かなり似ていますね。まず砂とか鉛筆を使って山を作るんです。参加者は山の周りで一人一枚願い事が書かれた紙を持って、呪文を唱えます。そして、もし紙に書かれた願い事のうち一つだけ本当の願いであれば『鬼』が願い事を叶えてくれるんです。ちなみに、紙は儀式中も、後も他人に見せてはいけませんよ。事前に本当の願いを書く人を決めておくのも禁止です」


―それだと、全員が本当の願いを書こうとするので、いつまでも儀式が成功しませんよね?


K「多分そこが肝なんだと思います」


――本日は取材へのご協力ありがとうございました。


K「いえいえ、私の情報がお役に立つと良いのですが……」



【Lさん】



――Aさんとは、どのような関係でしたか?


L「クラスメイト。だけど友達ではないです」


――では、どうしてAさんが行方不明になった日、共に過ごしていたのですか?


L「友人のKちゃんに誘われたからです」


――Lさんが抱く、Aさんへの印象は?


L「我が強いというか……空気が読めない子でしたね。この前も、クラスの女子をまとめている子……平たく言えば、カースト上位の子と喧嘩してたんですよ。私は、できればAさんとは関わりたくなかったです」


――Kちゃんが行方不明になった日、何がありましたか?


L「Aさん、Kちゃん、Rくん、私の四人で降霊術をしたんです。Kちゃんが、Aさんからおまじないの話を聞いて『やりたい』と言い出したみたいです。結局、降霊術が上手くいったかは分からないですけど、何事もなく終わり、全員家へ帰りました。帰ったはずなんですけど……Aさんだけは、姿を消しちゃったみたいですね」


――その降霊術について、詳しく教えて頂けませんか?


L「やり方は〔Kの説明と全く同じだった為中略〕です。この呪文は■■■■神社の祝詞と全く同じだって、Aちゃんが言ってました」


――祝詞が呪文だなんて不思議ですね。


L「そうでしょうか? 祝詞と呪うという言葉は語源が同じなんです。私が思うに……『呪』と『祝』は表裏一体なんだと思います……あぁ、急にすみません。趣味の話になると早口になる癖があるもので、実は私オカルト研究部の部長なんです」


――あら、物知りなんですね。勉強になりました。ありがとうございます。


L「いっ、いえ……」



【Rさん】



――Aさんとは、どのような関係でしたか?


R「Aとはクラスメイトです」


――Kさんが抱く、Aさんへの印象は?


R「可愛いし、根は優しくて真面目だと思うんですけど……クラスの中じゃ、かなり浮いていたと思います。いつも、一人でいたくて、ぼっちだったというか……」


――Aさんが行方不明になった日、何がありましたか?


R「AとKに誘われて変な、お呪いみたいなヤツをやりました。実を言うと、俺、ルール破っちゃったんですよ。他の奴らのカード見ちゃったんです。あー、でも自主的にカードを盗み見た場合は大丈夫なのか」


――ちなみにカードには何と書かれていたのかお伺いしてもよろしいですか?


R「KとLカードには両方『Aが居なくなって欲しい』と書かれていました。もし、おまじないが成功したなら、どちらかは本音を書いていた可能性がありますよね。個人的にはKのカードが本音だと思いますけど。これは聞いた話なんですけど、Kは片思いの相手をAに奪われたらしいです。ちなみに……一番怖かったのはAのカードで『意地悪な奴を懲らしめたい』でした」


――Rさんはカードに何と書かれたのですか?


R「俺っすか? 今夜の夕飯はカレーがいいなー、ですよ。結局、夕食のメニューはシチューだったけど」



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