第25話 恋に狂った女は怖い!



 それでは……ママ友3人組彩の不倫相手直樹の真意は一体どこにあるのか?


 彩は13歳から間借りさせてもらい桜井浩一の家で生活をしていたが、浩一との関係を妻直美に見られて追い出されてしまったが、世間を全く知らないうぶな彩は捨てられたくない思いで一杯で、他の男など考えられない。当然だ最初の男だったので浩一しか見えていない。そんな時に若き料理人直樹と出会い「自分の人生は間違っている」そう思うようになり、どんなことをしても直樹との結婚を考えるようになる。

だが、先立つものは「お金」こうして直樹の意のままに行動をして重要書類のコピーを再三に渡って手渡しスパイと化して行った。


 一方の直樹は最初は美人で才女の彩にビビッと来たが、何と言ってもリーマンショックで焦げ付いた「今井産業」を守り抜く必要があったので、親会社の専務取締役の妻彩を利用して窮地を脱しようと画策する。最初こそビビッと来たが、のめり込み過ぎる彩に対して危機感を感じ気持ちは冷めて行った。第一可愛い娘も誕生してそれどころではないのに「結婚!結婚!」と矢の催促に最近はうんざり気味。


 それでは……彩の夫浩一の死の真相は、直樹と結婚したいが為に彩が何らかの方法で、浩一を死に至らしめたのだろうか?それとも……1億円の保険金に目がくらみ直樹に懇願されて、彩が浩一を殺害してしまったのだろうか?



 夫浩一が亡くなった日の事を再現してみよう。


 あれは1年前の12月27日の寒い朝で東京は-2.2℃の日だった。

 丁度子供達は冬休み期間中でクリスマスパーティーの夜からばあばの家に泊まり込みで家にいなかった。


 それでは……実際には夫浩一は彩が直樹とダブル不倫している事を知っていたのか?


 彩は浩一とは完全に冷めて離婚を切り出していた。彩は夫と離婚しても自立できる自信があった。それは交換留学生としてコロンビア大学に留学していた経験があり、ましてや大学では「人文学類英語学コース」を卒業しているので英語はペラペラだ。


 通訳の仕事の種類は多岐にわたっており会議通訳、ビジネス通訳、放送通訳、エンターテインメント通訳、イベントスタッフ、通訳ガイド、コミュニティ通訳、ボランティア通訳、通訳の仕事は紹介したもの以外にも、たくさんの種類があり彩の実力なら仕事に困る事は無い。


 当然直樹と一緒になる前提があっての事なのだが、浩一との離婚を急いでいる。

もう一緒の空気を吸うのも嫌なくらいに冷め切っていた彩。


 ★☆


 彩一家は12月25日クリスマスパーティーをばあばの家で楽しみ、夫浩一と彩だけは夜家に帰った。


 翌朝彩は夫浩一を会社に送り出し、今日は久しぶりに直樹との時間がたっぷり取れると喜び勇んで家の用事を済ませて、直樹との待ち合わせ場所に向かった。今日は子供たちがいないのでゆっくり出来るのだ。夫は今日は出張で名古屋本社に行くと言っていたので明日帰ってくる予定だ。


 そう思い今日は朝帰りをしても安心。そして翌朝子供たちが朝の9時にばあばと帰って来ると言っていたので、近所の目もあるので朝方の暗い内にこっそり帰って来た。


 誰もいない筈だが、近所に朝帰りの実態を聞かれてはと静かに扉を開けて家の中に入って行った。まだ朝の5時で外は真っ暗、疲れたので一眠りしようと寝室に向かった。


 ドアを開けて照明の電気を付けた。すると夫が眠っているではないか。


「ええええええええええええ😱💦💦 エエエエエェェエエエエエエッ😦!」


 彩はどうしていいか分からない。夫は出張しているものとばかりに思い直樹と熱い時間を過ごして来たというのに……どう言い訳しようか迷っていると夫浩一が、むっくりと起き上がって来た。


「どうしたんだい。こんな朝方帰って来るなんて……一体どこに行っていたんだい!!!💢💢💢」


 凄い剣幕で彩を睨み付ける浩一。実は…浩一は出張が相手側の都合でキャンセルになり夜の8時には帰宅していた。妻彩にいくら電話をかけても出ないので、怒りで眠れない一夜を過ごしていたのだ。目は真っ赤に充血し怒り狂った目に彩もどう言い訳して良い者やら考えあぐねている。


 彩はまさか出張している夫が電話を掛けて来ようとは思わず、一分一秒直樹との時間を奪われたくなかったので電話に出なかった。


「嗚呼……大学の友達が独身で飲みに行っていたのよ」


「それにしては……お酒の匂いがしないじゃないか?」


「私はそんなに飲まなかったから……」


「俺が知らないと思っているのか?お前あの「今井産業」副社長と出来てるだろう💢💢💢」


「何を言っているの?あなただって今井さんとは知り合いじゃないの。以前の「割烹光城」時代からの長い付き合いじゃないの」


「割烹光城」は東京にも支店があるからな。こっそり俺に隠れて会っているんだろう?」

「何を言うの。全く関係ないわ。只のお客とシェフの関係だけよ」


「お前が最近は俺を避けて離婚を口にするようになって来ているので、男でも出来たのじゃないか調べさせたのだ。すると……お前が俺の目を盗んで今井と会っている写真を入手した。そして、俺が出張している時に子供をおばあちゃんに預けて今井と会っている情報を突き止めた。噓は許さない😠😠😠!!!!」


「……ええ仕方ないわね。そうよ。私はあなたと絶対に別れたいと思っているわ。それでも……あなただって私一筋という訳でもないじゃないの。あなたが秘書と深い関係だったことは知っているのよ。だから……お相子じゃない。だから離婚条件はこの家は当然私と子供たちの為に必要です。それと……養育費を支払ってください。そして当然離婚もして下さい。もう私はあなたとやって行くつもりはありません」


「バカなこと言うんじゃない。お前なんかにびた一文くれてやる金などないわ💢💢第一今井だって結婚している身じゃないか。おいそれとお前と結婚出来る訳ないじゃないか?」


「私は今井さんとは関係ありません。只……折角の人生今のままじゃイヤなのです。仕事も筑波大学のお友達が通信販売の仕事を始めて、是非とも通訳の仕事を手伝ってほしいと言っているのです。例えば本を英訳したり、ビジネス通訳等々と頼まれているのよ」


「何を言っているんだ。俺は子供達とも彩とも絶対に別れたくない。俺が何したっていうんだい?まあ確かに秘書とはそういう事もあったかも知れないが、今は秘書は結婚して退社したので関係ない。お願いだ考え直してくれ!」


「イヤ……イヤ……絶対にイヤ……!」


「お前そんなにあの今井直樹が良いか?俺は調べて知っているんだ。あの男は確かに仕事は出来るがとんでもない男だ。お前だけを思っていると思ったら大間違いだ。あの男は京都本店の「割烹光城」の女マネージャーと出来ている。確かにお前の方が才女かも知れないが、その女は32歳でお前よりも7つも若い、それに仕事もよく出来るので今井はかなり入れあげているようだ。お前みたいなおばさん捨てられるのがオチだ」


 彩は頭に血が上る思いがした。かれこれ15年今井だけを見詰めて仕事にも協力をして来たのに、若い女が出来たので最近は事あるごとに口実をつけて会うのを避けていたのだ。利用するだけ利用してポイって事。そんな女がいたとは許せない。カーッ💢💢💢となった彩は思わずとんでもない事を口にした。


「悔しい!!!💢💢💢あんなに尽くしたのに……直樹が許せない💢💢💢」


「もう今までの事は仕方がない目をつぶる。だから……そんなバカな男忘れな」


「イヤよ!まだ子供だった私は……浩一に17歳で処女を奪われ、浩一が全てだと思ったわ。でも……それは錯覚だったって気づいたの。やっぱり無理20歳の差は無理があったのよ。あなたがどれだけ頑張っても、私はあなたと一緒に生きて行くことなんて出来ない!」


「なんでだよ?」


「イヤよ!こんな高齢の老人なんて……絶対にイヤ!こんな男と一生生きて行かなければいけないくらいなら死んだほうがまし!!!」


「ナナ 何てことを……ああああああああ!……胸が……くく苦しい」

 急激に押し寄せて来た胸痛。


「ぅうううッくく 苦しい!」


 余りの激痛が走り冷や汗がだらだら出てくる。

「はっ早くぅうううッくく 苦しい!うううん……救急車を……救急車を……」


「ふっふっふっふ……もっと……ふっふっふっふ……苦しんで……」

 のた打ち回る浩一を冷たい眼差しで見詰める彩は、あれだけ浩一が苦しみを訴え急を要しているに,直ぐには救急車を呼ばなかった。浩一は苦しみぬいた挙句とうとう失神してしまった。


 彩はやっと救急車を呼んだ。 こうして病院に緊急搬送されたが急性心不全で亡くなってしまった。

 

 心不全は12月から3月までの時期に気温が低いほど心不全の発症が多く、特に5度以下になるとその発症が増えることがある。この日の朝方の温度は-2.2℃だった。

 彩はこの日は気温が下がると天気予報で知っていて、わざとこの日を選んで浮気をして帰って来たと見せかけて、夫の心臓に負担をかけて殺害しようと思ったのかも知れない。


 電話に出なかったのも、よく出張と言ってキャンセルという事も有ったので、しょっちゅう携帯に電話入る時は中止だという事を熟知していて、わざと朝方帰って心臓の悪い夫を心臓発作で殺そうとした感は否めない。

 


 実は…浩一は以前心筋梗塞の手術を受けていた。こうして急性心不全で亡くなってしまった。


 恋に狂った女は怖い。

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