第23話 見えてきた貞子邸


 そろそろ物語も佳境を迎える事になるが、ここでもう一度詳しく相関図を説明して置く。


 謎多き貞子様を知る為にも、もう一度主だった面々の人となりを紹介しておこう。

 

 ★高齢マダムグループ。

 *元経済産業省官僚前田邸の美智子様(45歳の定職に就かない長男がいる)

 *近所からも奇異な目で見られる実態の分からない怪しい北村貞子様

 *お寺「永願寺」の住職夫人で町内会長夫人雪乃様(コロナ禍で外出規制がかかり負債を抱えている)

 *大地主夫人良子様(夫勲氏が愛人を何人も囲って、ノイローゼ状態に追い込まれている。子種が無いのに美月との間に出来た娘凜を本当の娘だと勘違いしていたが、本当は同じ町内のミュージシャン圭祐の娘。スキャンダルを嫌って美月との関係は封印している)

 *会社社長夫人和子様(夫がギャンブル依存症)


 ★ママ友グループ。

 *東京大学付属病院のエリート医師昴の妻愛美。母マリがホステス時代に未婚の母として誕生した私生児。父親は分かっていない。学歴は中卒。

 

 *IT企業社長聖哉の妻里奈。里奈の父は創業100年の老舗料亭旅館「熱海 迎賓館 梅花亭」を経営していたが、バブル崩壊で倒産。その為学生の頃クラブホステスとして働いていた過去があリ、2号さんから格上げしてもらい本妻となった。

 

 *20歳年上の「HOSINO」専務取締の夫浩一の妻彩。彩の父親は高級フランス料理店を経営していたが倒産。その為お店のお客様で友達の浩一に頼んだ。「娘たちを暫く預かってほしい」のちに夫となる桜井浩一の家に間借りして生活。筑波大卒でコロンビア大学交換留学経験ありの才女。夫浩一は最近急性心不全で亡くなった。そして…何と1億円の保険金が掛けてあった。更には妻彩は「今井産業」社長直樹と不倫関係にある。



 そして…窃盗被害に遭った邸宅は揃いも揃って★高齢マダムグループと★ママ友グループが住んでいる東京屈指の高級住宅地、東京都港区元麻布の住民が被害に遭った。


 最初の窃盗事件は、大物ミュージシャン高沢邸の現金やキャッシュカード更に1本1㎏の金のバーが3本被害に遭った。そして次が全国展開するラーメン専門店Sugitayaの社長夫人の宝石類が根こそぎ盗まれた。そして…最後の被害者で元官僚前田邸美智子様の4800万の「奇跡の宝石サファイア」が盗まれた。


 ★☆


 実は…★高齢マダムグループの1人大地主夫人良子様は夫勲氏との間には子供は誕生しなかったが、クラブVenus(ビーナス)に勤務していたホステス美月との間に娘凜が誕生したのだが、それは真っ赤な噓で、実は…凜はミュージシャン高沢圭祐と美月の間に誕生した娘だった。



 そして…現在27歳の凜は石川県にある従業員数200人程の、近年グングン業績を上げている優良企業「兼六ゴールデン観光㈱」の跡取り息子竜也と結婚する予定だった。


 ミュージシャンの父圭祐も大喜びしていたのだが、玉の輿と喜んでいたのも束の間、2019年から発生した新型コロナウイルス対策による外出自粛を受けて、全国的に観光客が減り、とうとう観光会社「兼六ゴールデン観光㈱」が倒産してしまった。


 その時凜は既にお腹に子供を宿していたので結婚せざるを得なくなってしまった。


 こんな現状化ミュージシャンで義理父圭祐の紹介で、テレビ局の裏方の仕事をしているが給料はそんなに良くない。一方のシンガーソングライターの凛も父圭祐のような才能がある訳でもないので、赤字らしい。という事は凜夫婦は収入が少ないという事だ。


 こうして……生活苦からミュージシャン高沢邸の現金やキャッシュカード更に1本1㎏の金のバーを3本を盗んだ可能性は十分に考えられる。例えセキュリティー対策で、ドアを開けるたびに電子音が鳴ったとしても、近所の住民もお嬢様だという事を良く知っているので不審には思わない。テレビでも高沢氏の隠し子報道はされて知っているので不審に思われることはない。そこを突いての盗みだったのかも知れない。


 ★☆


 ここで最重要人物、近所からも奇異な目で見られる実態の分からない怪しい貞子様の実態に触れていこう。


 この夫婦は一体何者?


「田コンビ」が必死に事件解決に向けて討論している。


「どうも……やはり皆さん口をそろえておっしゃっていますが『あの家は怪しい?人を寄せ付けない不気味な……何かがある?』ただ……町内会長夫人だけは『気さくで貞子様は絶対に外せませんわ!』このように頑としておっしゃるので、例のブルジョアグループの仲間入りをなさっていますが、この界隈でも目を見張る豪邸にお住まいなのだが、その実態は明らかになっていない。これだけの一等地にあれだけの豪邸をキャッシュでポンと購入したとんでもないお金持ち。だが、その実態は何も分からない。本来ならば子供でもいれば子供は正直だから全て話すと思うのだが、ご夫婦2人きりでの生活。更には不思議なことに、若者たちが多くこの豪邸に出入りしているのだが、釈然としない。その若者たちもハツラツとした連中ではなく、うつむき加減の青白い……なんと表現したらよい者か?良く言えば知的で物思いにふける若者たち。悪く言えば精神に何らかのトラブルを抱える躁うつ病患者のような若者たちが、入れ代わり立ち代わり現れては消えていく不気味な家だと、近所の住民たちも口を揃えて不安な気持ちを吐露しています」


「それでもニュースになった訳でもない。何も悪い事をしている訳ではないので、むやみやたらに調べるのもどうかと思う。あくまでも窃盗事件にどのように拘わっているかだけだ」


「そうですよね?只不気味というだけで調べる訳にはいきません」


「ミュージシャン圭祐と美月の間に誕生した凜。そして……美月の知り合いが貞子様と言うことは、この3組の家族が結託してミュージシャン邸の窃盗事件の犯人と考えることが出来る。その理由は美月の旦那様というのがスナック経営者で経営危機に陥っているらしい。それと……美月と貞子様が知り合いという事はやはり……貞子様も怪しい」


「コロナ禍で水商売も店を畳んだところが多いと聞く。それに……金銭的に余裕がない凜夫婦が絡んで窃盗事件に発展した可能性は十分に考えられるなあ」


 ★☆ 


 それでは……貞子様の夫稔氏の正体を明かそう。

「ネオヒルズ族」主にインターネットを活用して、短期間に莫大な利益を出す人達のことを総称して言う言葉。


 夫稔氏はかつて、20代の若さでアパレルショップを起業したが、ぼろ儲けして浮かれてしまい倒産の憂き目に遭っていた。だが、最近は仮想通貨で20億円稼いでドバイにある超高層ビルの一室を3億円で購入。リッチな生活を送っている。


 更には、アフィリエイトと言って、自分のWEBサイトやブログ、SNSで商品を紹介し、ユーザーが商品を購入することで収益の一部が還元される仕組み。どうもこれで儲けているようだ。


 総資産100億円とも言われている稔氏は基本ドバイでの生活が主だ。東京は仕事で活用する別宅だった。当然ドバイに本妻が居て貞子様は現地妻という事になる。


 だが恐ろしい事に、その裏で暴力団との繋がりも噂されている。


 更には怪しい若者たちの出入と、余りにも徹底した秘密主義。その裏で何が繰り広げられているのか?












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