ロベリアの悪意

あのね!

第1話 「奇跡の宝石サファイア」 



 ここは東京港区元麻布の新興住宅地。元々この一帯はセレブリティたちの巣窟となっていて、政治家、著名人、大企業重役、病院経営者等々が住んでいるのだが、未開発地域に新たに住宅が建ち並び始めた。


 そんな高級住宅地に移り住んだ年齢も近い、愛実40歳と里奈39歳に彩41歳は家が近所という事と、子供が同級生ということで親しくなって行った。


 だが、こんなセレブが住むセキュリティも万全な高級住宅街一帯で、最近強盗事件が相次いでいる。 


 


 それではこの物語の主人公3人組を紹介して置こう。


 愛実(あいみ)の夫昴(すばる)は大学病院に勤務する医師で行く行くは実家の病院を引き継ぐ跡取り息子だったが、後妻の1人息子が後を継いだので現在に至っている。高校時代の上級生だった昴とは部活のテニス部が一緒だったので付き合い出し、めでたく結ばれた。子供は中学2年生の長女心春(こはる)と小学4年の次女結愛(ゆあ)の4人家族だ。


 そして隣に住む里奈(りな)の夫聖哉(せいや)はIT企業を経営する若き経営者。中学2年生の1人息子蒼空(そら)君と3人家族。

 

 もう1人の彩(あや)は斜向かいに住む20歳年上の自動車メーカー「HOSINO」専務取締役の妻なのだが、つい最近夫が心不全で突如亡くなり、現在は子供2人中学2年生の湊(そう)君と小学6年生の澪(れい)ちゃんの3人で生活している。


 


 今日もママ友3人組は近所のパスタ専門店で食事を取りながら歓談中。


「本当に物騒よね」


「うちの2軒先の前田さんの家に強盗が押し寄せて倉庫から4800万の「奇跡の宝石サファイア」が盗まれたのよね。あまりにも高価なので厳重な倉庫に保存して更には金庫に保存していたらしいのよね。そして…ご契約先のセコネ(セキュリティー・コネクション)を24時間オンラインで結び、契約先に設置したセンサーが異常を感知した場合、「安全のプロ」である緊急対処員が急行し、迅速かつ適切に対処する仕組みになっていたのに、盗まれちゃったのよね。ここまで厳重にしていたのに本当にキツネにつままれたような話よね?」


「あの日、近所の奥様達が4人前田邸で松茸づくしの食事を楽しんでいたのよね。どうも…その日に4800万円の「奇跡の宝石サファイア」が盗まれたらしいのよね」


 一体誰が「奇跡の宝石サファイア」を盗んだのか、皆目見当がつかない?


 大事な財産を守るために、倉庫には24時間365日セコネが監視するセキュリティシステムを導入。屋外は外周センサーで侵入者を警戒監視カメラシステムで完全にブロック。また不審者や従業員による犯罪抑止のために、倉庫内を見渡せる場所に監視カメラを設置していた。これほどまでに注意していたにも拘らず盗まれてしまった。

 

 この前田邸の奥様は怒り心頭で早速盗難届を出した。すると聞き取りのために刑事が訪れたので事細かく説明している。


「あの時は近所の奥様たちとなごやかに親睦も兼ねて、1ヶ月に一回の気心の知れた奥様たちと楽しい時間を過ごしておりました。そして翌朝主人が重要書類を取りに倉庫に入ったところ、金庫の中に厳重にしまってあった「奇跡の宝石サファイア」がなくなっていることに気づいたので御座います」


 

 こうして窃盗事件として早速玄関その他の出入り口付近とか、紛失物の保管場所付近を中心に「指紋採取」が行われた。窃盗犯が侵入したものとしての捜査だが、指紋照合のため家族全員の指紋提供も求められた。


 だが、家族以外の指紋が発見された時は、当然のことだが、指紋の持ち主が犯人の疑いを掛けられるのだが、前科等がなければ指紋採取が行われていないので犯人割り出しは困難になる。


 結局複数の指紋は採取されたが、前科がない指紋の数々に犯人割り出しは困難を極めた。


 それではあの日前田邸を訪れたご婦人方はどのような面々だったのか?


 それでは先ずは最初に前田邸の家族紹介をしておこう。

 当然子供たちは独立して現在は2人きりだ。夫75歳は元産業省の官僚で現在は引退している。妻は専業主婦。


 最初のご婦人は町内会長の奥様で雪乃様。2人目の奥様は中小企業の会社経営者の奥様で真理様。3人目の奥様は夫が亡くなり1人で豪邸に住む貞子様。最後の4人目の奥様はこの一帯の土地を所有する地主の妻良子様。まだ詳しい事は分かっていないが、ざっと聞いただけでもブルジョア感が漂うご婦人方ばかり。


 全く犯人の目星がつかない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る