第8話 疑問と、初恋
しょうもない疑問に頭が支配されている。
彼女の好きな食べ物ってなんだっけ?
定期考査の答案用紙に対しても、過去これまで悩んだだろうかという私が頭を悩ませている難問。
つまるところ今日の放課後デートの行先について思い巡らせているうち、たどり着いたのだ。
机の上に次の授業の教科書を出し、頬杖をついたところで私、美園ミユカの脳は稼働。もう既に稼働していただろ、なんてツッコミは無視。
いつも放課後遊ぶのは近所のショッピングモールか、こじんまりとしたカフェ併設の大型スーパーの2択で、稀に電車に乗って繁華街に行くとか公園で雑談とかもある。いちばん頻度が高いのは私の部屋だけど、さすがにそれをデートと呼ぶ人は世間一般的にも限られている気がするので除外。
朝の感じだと、一応は私の奢りでカフェという話になっているものの、これはデート。英語かフランス語か知らないし調べる余力はないので詳細はさておき、ふたりでロマンチックに外出および散策する行為をデートと仮定する。この場合、さすがにいつも行っているカフェに行くのも味気がなく、とはいえ明日は平日であるからにして電車に乗るほどの寄り道はハメを外しすぎというものだろう。
おお、ここまでは非常に論理的。
それでカフェとなると、ショッピングモールに入ってるけど普段行かないお高めのオシャレな所、あるいは駅前の渋い喫茶店めいたカフェに絞られる。が、喫茶店とカフェを等式で結んでしまうには女子高生としての格が試されるわけで。
……お財布、持ってきてるよな?
唐突に不安に襲われたあたりで、タイミング悪く始業のチャイムが鳴る。仮に忘れたとしたら奢るどころではなく、デートどころではなく。このまま悶々として過ごすのかと思うと、ひどく長く感じること間違いなしの50分。
奇しくも数学だし、次の時間。
長いんだよなぁ、あの先生の話……。
私の初恋は彼女と定義する。
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