ゴミ野郎を探せ!
数日後、ローマンはさいたま市のとある交番にいた。新米の警察官が、現実に叩きのめされていたのだ。
昨日、彼は初めて、飛び降り自殺の現場に行った。
脳漿が飛び出していても、救急隊は心臓マッサージをし、「救命措置」を試みながら病院へ搬送していった。しかし彼を打ちのめしたのは、屋上で靴を重しにした、遺書だった。
飛び降り自殺をしたのは未成年の少女だった。家は貧しく、年頃のオシャレも我慢するような健気な娘。そんな彼女の唯一の年頃らしい存在だった、「大人の彼氏」。
少女は彼と関係を持ち妊娠したが、その彼氏は若さに反して既婚者だった。それどころか、相談先で「パパ活」を疑われたという。
合意である以上わいせつにはならず、相手も離婚して雲隠れした。
高額な慰謝料と堕胎費用、未来を悲観し、僅か2 0 年にも満たない清貧な少女は、胎の子共々命を絶ったのだ。
それでローマンが呼ばれたのである。
ローマンは信仰を持っていなかったその少女の魂がどこにいったのか、なんとなくしか分からないが、少なくとも今生きているこの若い警察官の苦しみを聞くことしか出来なかった。
少し立ち直った警察官が、自分とローマンに何か心休まるものはないかと交番の向こうへ引っ込んだ時だった。
「ローマンのゴミ野郎はここか!!!!」
「うわぁぁぁぁぁ!!??」
戦車が突っ込んできて、交番の前半部分が吹き飛んだ。乗っているのは、それこそまるで娘をキズモノにされた父親のようなマーティンであった。
「おま、ここ日本―――。」
「ここに居たのか、この鬼畜! ペドフィリアのド変態野郎!!」
「今に始まったことじゃないけど今露呈してるからその言い方止めてくんない!?」
「今すぐ矢追町に戻れ今すぐ戻れ僕の家族にとんでもないことしやがってこのチンポ野郎が。」
「否定できないけど今の時期はやめてくれる!?」
「黙れ!いいから直ぐに親族会議だこの犯罪者が!!」
「元ヤクザの牧師がウリのお前でも言い過ぎだろ!?」
「山口組とのタイマンの方がまだ救いがあるわこの外道!!」
そういうわけで、ローマンは文字通りの屠殺場に引かれる子羊のように交番を出た。
その頃には、もう交番は元通りになっていた。概念でよかった。
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