学園への入学

学園に入学する当日の朝。


私は馬車で学園に向かっていた。


「ティアナお嬢様」


「どうしたの?ネルラ」


学園では寮での生活になる。


そのため学園の中には入れないが、寮では侍女を一人まで連れてきて良いことになっている。


その侍女にネルラは名乗り出てくれたのだ。


「最近、リアーナ様はティアナ様を敵視しているように感じます。お父上にご相談されなくてもよろしいのですか?」


「・・・お父様は私達姉妹の仲を気になどしていないわ」


「ティアナ様、私はいつでもティアナ様の味方ですわ」


ネルラはそう述べて、私の手をぎゅっと握ってくれる。


「学園では私はロイド様の婚約者として見定められる。ネルラには色々と苦労をかけるかもしれないわ」


「そんなことは気にしないで下さいませ。私はティアナ様の侍女ですよ?」


「ありがとう、ネルラ」


私はネルラの手を優しく握り返した。


学園の門をくぐった私は寮の荷物の整理をネルラに頼み、入学式の会場へ向かった。



入学式が始まる。


新入生代表の挨拶は、勿論第一王子でいらっしゃるロイド様である。


新入生代表の挨拶を凛とした姿でされるロイド様に、他の新入生たちは釘付けだった。


「これから先の学園での生活を皆で有意義なものにしよう」


そう締めくくったロイド様に大きな拍手が起こった。


入学式が終わり、会場を後にしようとした私をロイド様が呼び止める。


「ティアナ、放課後の予定はあるか?美味しい紅茶を手に入れたんだ。よければ一緒に飲まないかい?」


入学式で集まった生徒たちが、私たちに注目している。


ロイド様に近づかないようにするといっても、ここで断ればフィオール家が王家の誘いを断ったと噂される。


「分かりましたわ。御一緒させて下さいませ」


私はそう述べて、入学式の会場を後にした。


一度、自室に戻った私をネルラが出迎えてくれる。


「入学式はどうでしたか?」


「無事に終わったわ。それとこの後、ロイド様にお茶会に誘われたの」


「では、精一杯お洒落をしないとですね」


「それは・・・」


今までの私なら喜んでお気に入りのドレスを着ただろう。


しかし、今はそんな気分にはなれなかった。


ネルラがドレスを選びながら、私に問うた。


「気が乗りませんか?・・・しかしティアナ様、お洒落は武器ですのよ。きっとティアナ様の気持ちを強くしてくれますわ」


そう述べて微笑むネルラに、私は笑ってしまった。


「そうね。では、今日は髪も結ってくれるかしら?」


「お任せ下さいませ」


準備を済ませた私は、お茶会の場所へ向かった。

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