第34話 希望の光
ダンジョンの空気が凍り付いていた。
「いくぞ!」
鋼鉄のように変化した皮膚を輝かせ、
「チェストォォォ!」
島津連司の「ムラマサ」が鋭い斬撃を放つ。しかし、その一撃は
「どうした、一刀両断するんじゃなかったのか?」
「お前、強くなるために人間やめたのか?」
島津が
「ふざけるな!俺は人間のままだ!」
島津は冷や汗を流しながら体勢を整えるが、彼らがその隙を見逃すはずもない。
すぐさま天井から雷鳴とともに鋭い矢が飛来する。
「危ない!」
アヤメが土の剣「大地紋」を発動させ、瞬時に土壁を作り出す。矢は壁に突き刺さり、かろうじて島津を守った。
「たすかったぜ、神楽!」
「このままじゃ押し切られるわ」
だが、
アヤメの視界が張の巨体で塞がれたその時、その背後から
「その魔眼で、自分が斬られる未来は見えたか?」
四本の剣を自在に操る
しかし、四本の剣による複雑な連携攻撃をすべて避けることはできず、肩を深く斬られてしまう。
「っ……!」
しかしアヤメの服が一部裂けただけで、それ以上の傷にはならなかった。
「ん?お前の服……異常なほど頑丈だな」
李は目を細め、斬りかかった剣の手ごたえに違和感を覚えた。
「さあ、後輩が手編みしてくれた服だからかしら」
アヤメが息を整えながら微笑む。その服は、メイが超硬糸で編んだ特殊な防具だった。
(助かったわ、メイ)
【アヤメ姐さん、がんばって!】
【服の話は今じゃない!】
【完全に分断されちゃったね】
【個々で戦ったら勝てねーぞ!】
一方、伊集院ミレイは
「あなたの厄介な駒も、上から見下ろせばただの滑稽な道具ね」
「やっと同じ目線に立てたのが嬉しいの?」
伊集院は余裕の笑みを浮かべ、逆に
「上等よ、その口を射抜かれてからも同じことを言えるかしらね!」
【伊集院ちゃん挑発上手すぎw】
【たぶん他の二人に意識を向かせない配慮】
【ミレイってかなり頭いいよね】
【でももう時間の問題だろ】
【だな、そろそろ分身も居なくなる】
視聴者たちの応援が飛び交う中、伊集院は
「あの
天知ひかるの分析の通り、
それに乗じて挑発と回避で戦局を作る島津と伊集院。それでも圧倒的な力を持つ
挑発が功を奏し、
それは各位が
そして怒涛のスピードで
彼女は、土の剣「大地紋」の土壁で時間を稼ぐが、
「”魔眼”で、もう敗北は見えてるのだろ?」
距離を詰めた
「あなたの泣きっ面なら……見えてるわよ!」
アヤメは魔眼『フォーサイト・オブ・ルージュ』を発動し、2本の短剣を駆使して攻撃を捌く。だが、四つの剣が織りなす猛攻は凄まじく、次第にアヤメは追い詰められていった。
「さすがに避けきれない……か」
そう言った直後。アヤメの赤く輝いていた魔眼が光を失い、動きが止まる。
「ちっ、もう視力が……」
彼女は魔眼を酷使しすぎたことで、盲目状態に陥ってしまった。
「どうやら副作用が出たようだな、ここまでだ!」
李が冷たい声で剣を振り下ろす――その瞬間。
「させるか!」
突如響いた声と共に、天知ひかるの七支刀が、
【天知キター!】
【やっとかよ、遅いんだよ】
【剣の枝に李の四本みごとにひっかけたな】
【やる時はやる男だ!】
「残念だな、アヤメさん。俺の華麗な登場が見えてないなんて」
天知ひかるは七支刀を回転させ、ひっかけた
「まだゴミがいたか……」
「まさかもう一人サポートが居るとは予想してなかったみたいだね」
天知が軽口を叩きつつ、剣を構え直す。その一撃に
「……不意打ちが二度通じると思うなよ」
さらに
「あ……ヤバいなこれ」
天知は額に浮かぶ汗を拭い、七支刀を構え直す。
「ごめん、アヤメさん。俺……多分死ぬわ」
天知の言葉は冗談めいていたが、その声には覚悟が滲んでいた。
すると、彼の肩にアヤメの手が置かれた。
「安心して……あなただけ死なせない」
盲目の状態ながらも剣を構える神楽アヤメの声には、決意の色が濃く宿っていた。
覚悟を決め構える二人の前で、剣の輝きを増しながら、
すると突然アヤメが、何かに気がついたように中空を見つめた。
それを感じた天知が驚いたように振り返る。
「ん……アヤメさん?」
「……間に合ったみたいね。あなた大金星よぉ」
そのとき、冷たく沈黙していた巨大なボス部屋の扉が、低い轟音とともに、まるで戦場の空気そのものを切り裂くかのようにゆっくりと開かれた。
中から現れたのは、一筋の光にも似た三人の影。
その中心に立つ少年の瞳には、烈火のような光が宿っていた。彼の足元に広がる魔素のうねりは、一瞬で場の空気を変えた。
【カイきゅんキターーー!】
【リサちゃんも参戦?】
【よし!よし!よし!】
【まってたよリサちゃん!】
【黒髪の美女もいる!】
「アヤメさん、待たせてごめん――」
カイの静かな声が響き渡る。その背後で、リサとメイが鋭い視線を
押しつぶされそうな絶望の淵で、日本中が息を呑む中――希望の光が、ついに射し込んだのだった。
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