第42話
「......まさか、二将も退けたのか」
隠れ家には水守の者たちがいる。 どうやら偉角から話が伝わっており、すんなりといれてくれた。
「すまない...... ここを探っているものたちがいてな。 博徒どもに近辺をうろつかせていた」
そう
「それで他の水守たちの話は......」
「ああ、いくつかの場所と連絡が途絶えた......」
「おそわれたのでしょうね」
流雅は目をふせる。
「......なれば、この町にいる八将の話を聞きたい」
「......そうだな。 しかし......」
「なにか?」
「ここにいるのは【崩落の結重】《ほうらくのゆえ》...... 彼女はこの地にて苦しむものの手をとっている」
「そのような者がいるか...... その者なら説得も可能ではないのか」
「そう考え、幾度か接触を試みたが、首をたてにはふらない。 そこで天陽どのには、彼女を説得してもらいたい」
「ああ、無論そのつもり、彼女と会えるか」
「おそらく、この地の療養所にいる」
私たちは結重にあうため、療養所にむかうことにした。
案内された先は、けして立派とは言えないが、なるだけ清潔にしていた。 そして多くの病にふせるものや手足を失ったものたちがいた。
「何者だ......」
いつの間にか気配があり、後ろから背中に突きつけられた。 それは短刀だと感じた。
(坐君...... いや体術の類いか)
「私は天陽」
「天陽...... まさか」
刀を引く感覚があった。
振り向くと、長身の女性がいた。
「まさか、敵国に堂々とくるとは...... 天沼では童を間者にでもするのか」
そう甲冑姿の女性ーー 結重は眉をひそめた。
「結重どのだな。 少し話がしたい......」
「......ならばこちらにこられよ」
奥の方の部屋へと案内された。
そこには薬や包帯などがおかれていた。
「それで話とは...... いや当然、私を懐柔にきたのであろうな」
「その通りだ」
「......無駄だ。 私は荒我八将だぞ」
「わかっている。 そこをしった上でこう話をしている。 このまま更に戦が進めば、多数の罪なき人々が犠牲になる。 それを止めるため、私たちは行動している」
「......それはそうだろう。 しかし、私を懐柔したとて、あの猛水が戦をやめるとは思えん」
その苦渋の表情から結重は戦いを望んでいないことは明白だった。
(やはり、この者は戦いを望んでいないな。 なれば......)
私たちは荒我八将を落としていることを話した。
「......二将がおちたか。 なるほど、それで民を扇動するか。 確かに猛水は民に恐れられて慕われてはいない。 しかし我ら八将を落として、本当に民が立ち上がるかどうか...... それほど恐怖政治が長く続いているのだ」
「もちろん。 八将だけでは不十分。 水守の工作が不可欠です。 ただ八将の脱落は、絶対の存在が偽りであったことを証明します」
そう流雅が説明する。
「流雅、博士か...... まさか、このように若いとはな。 そなたの名声は聞き及びしっているが、やはり危険だ...... 私が貴公らにつくことは、今はできん」
「それはここのことですか......」
「ああ、猛水がここの存在を無視しているのは、面倒だからだが、私がそなたらについたことがわかれば、見せしめのために兵を放ってここの者共を皆殺しにするだろう。 私にはこのものたちを見捨てることはできぬ」
「そこまでなぜここのことを......」
「そうだな。 私もここ出身だからだ」
「そうなのですか?」
「ああ、幼いとき捨てられたあとここにいた。 他のものからみれば、ここのものたちただ打ち捨てられた
「それを救いたくて将になられたのか」
「......いや、子供の頃はここを
そう懐かしそうに結重は答える。
「ゆえに、ここを巻き込みたくはないのだ......」
「今は戦に参加しないでくれるだけでいい。 大勢が判明したなら、たってくれればそれでいいのだ」
「......よかろう。 猛水からの要請をできるだけ先延ばしにしよう」
そう結重が約束してくれた。
「少なくとも結重はすぐ戦に参戦はしまい」
「ええ、ですが、あと二将をなんとか落とす必要がありますね......」
「結重が説得できそうな将を教えてくれた。 かのものの言葉なら信用できよう」
「そうですね。 まずその者の説得を最初にしましょう。 残りはどうやら説得に応じるような者たちではなさそうです。 それにあと一人は倒さねばならない...... 風貴どのたちも八将の誰かを落としているやもしれません」
私たちは結重が教えてくれた八将【砕泡の
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