第41話
(あれは幸彦...... 確かに墨也は倒したことをしっている。 一応八将の話は聞きかじったとはいえ、そう簡単だませようか)
満安の前に幸彦の姿となった流雅はたつ。
「そのものはどうした満安?」
「......幸彦か。 水守の隠れ家に近づいたものだ。 ただこの国のものではない。 おそらく天沼か......」
「ならば、俺に斬らせろ」
「......ならぬ。 こやつは捕らえる。 そんなことより貴様はなぜここにいる隠れ家を探る命をうけたであろう」
「知れたこと、向こうの隠れ家の者たちは斬ってすてた」
「......ふん、貴様のことだ。 切り刻んだのであろうな悪趣味な」
不快そうに満安はいう。
「そのために俺はこの国にいるのだ」
「......こやつは私が猛水さまのもとにつれかえる」
「忠誠心か」
「そのようなつもりもない。 前衛におかれた我が国の者たちを解放したいだけ......」
その時、満安の二又の槍が流雅に振るわれる。 すんででかわし流雅は距離をとった。
「くっ...... なにをする」
「なにをだと、貴様なにものだ...... あやつは返り血の匂いを消すため、香を焚くことを欠かさぬ。 装え! 【部昂】《ぶこう》!」
そういうと懐からでた
「くっ、ばれたか! あれは土をまとう【土甲】《どこう》!」
私が出ようとするが、その姿をみて足を止めた。
「なぜだ!? なぜそれを!」
満安も驚いている。 それは流雅の両肩より黒い鎌のような腕が出ていたからだ。
流雅は両肩の鎌の腕をうごかしながら、剣をぬいた。
「くっ! なぜ貴様が使えるのだ!」
だが満安の鎧は、幸彦の硬い鎌でも崩せない。
「確かに幸彦と同じ! だが剣技は遠くおよばぬ!」
「集え雲晶、穿て錬舞!」
「なに!?」
私の弓とした雲晶と放たれた錬舞は満安の鎧を貫いた。
「がっ!」
その一瞬のすきをとらえ、墨也が朧地で満安を気絶させ組伏せた。
「助かりました...... 面目ない」
墨也は礼をいう。 私たちは満安を捕えて洞窟奥で倒されていたものたちの手当てをする。
「いや、さすがに墨也といえど、八将二人続けては戦えまい」
「ええ、回避しようとしたのですが、戦いとなりました」
「すまない...... 我らが容易く倒されたために......」
「ああ、一人ならば逃げられたであろうに残られたのだ」
傷をおった水守たちがそういった。
「それで、流雅それは孵君になっていたのか」
「......はい、契約はできないため、偲顕の鍛練により孵君として扱うことができるようになりました」
「まさか、他者の坐君ごと写しとれるとは......」
「ええ、みたその者の能力も写しとれますが、何分戦闘技能は持ちあわせておりません。 私の身体能力では技能まで獲得はできませんでした」
「それでもたいしたもの。 いやいまはそれより、水守たち、他の八将の場所を教えてくれないか」
「ああ、我々が把握しているものたちは......」
そう水守たちに話を聞いた。
「ここか、水守たちがいっていた【棄民街】か......」
私たちは水守から聞いた場所にきた。 墨也は水守たちのけがの手当てと、自らの休息のために残ってもらった。
そこはかなり広い場所に粗末な建物がひしめくように建っている。
「貧しいものたちが集まって作った町のようです」
「ここのものは徴兵されないのか。 他の町では男なら徴兵対象でほとんどいなかったが」
少しだが男たちもいる。
「捨てられたものたちですからね。 不用意に徴兵をして軍に編成しても、軍規を破られても困るから放置なのでしょう」
「なるほど...... それで、水守はここにかくれているのか」
「ええ、そのようです。 木は森のなかといいますし...... この国に反抗するものなら隠れやすいのでしょう」
確かに人相の悪いものがこちらをうかがっている。
(雲晶は常に懐に忍ばせておこう。 流雅にも持たせてはいる)
細い路地を奥へとすすむ。
「やはり......」
「ええ、囲まれておりますね」
前から数人、後ろから数人が太い木の棒を後ろ手にもって近づいてくる。
「なんのようだ。 嬢ちゃんたち」
「人を探している」
「それなら俺たちも探してやるよ。 なあ」
ああ、と男たちはいった。
「悪いが、今はそなたたちと話しているひまはない」
「お前になくてもこっちにはあるんだよ!」
男の一人が木の棒をふるって恫喝した。
「二人ともつれてこい!」
頭領かくの男がそうあごをしゃくると、他の男たちが近づいてきた。
「仕方ない...... 雲晶」
私の影から大量の雲晶が周囲へと四散する。
「がっ!」
「ぐあっ!!」
「いてぇ!!」
「ひぃ!!」
男たちは雲晶にぶつかられ、うずくまり逃げ惑う。
「なっ!? この餓鬼、坐君を使いやがる!!」
逃げようとする男の足を雲晶であて転ばす。
「ひっ!」
「水守の隠れ家を知りたい」
「......わ、わかったよ」
怯える男から場所を聞き出した。
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