小説の面白い、面白くないとは

 こんな話をたまたま見かけました。


 もし「面白い小説を書くための能力」があるとすればそれはどんな能力か? ……と。


 ない。

 そんなものないんだよ。

 だからこの話はここでおしまいなんだ。


 ……ではお話にならないので私の独断と偏見で何故「ない」と思ったのかをしたためておこうかなと。


 なんで開口一番ないと断言したのかというと、面白さというものの定義が余りにも曖昧に過ぎるからです。もっと言うと、面白さとは相対的なものであって絶対的なものではないですから面白い小説という概念は主観でしか成立しないんです。


 そんなワケねーだろ、歴史に名を刻んだ大人気作品は面白くないって言うのかよ! って思うかも知れませんが、万人が絶対に面白いと思う作品なんて人間が人間である限り絶対に存在しません。


 例えばドラゴンボール。世界的に人気の作品です。

 でも、作品に触れた人全員が好きではない。

 ファンタジーやバトルが好きではない、登場人物の考え方が好きではない、巻数が長いから好きではない、世界観が好きではない、思ったほどハマらなかった、段々つまらなくなった、etc…etc…。


 ファンタジーやバトルが好きじゃないなら最初からドラゴンボールなんて読むなよ! って思うかも知れませんが、もうここで既に絶対的な面白さは消滅してます。


 そう、人には好みに合う合わない、そして飽きが存在するのです。

 この壁はこの世の如何なる作品にも絶対に越えることは出来ません。その道で伝説的な作品でも、合わない人にはどうあっても合わないし熱が冷める時もあるのです。


 ちなみに私が一番好きな小説は戦闘妖精雪風です。

 その道では超有名な凄い作品ですが、ガチガチSFのニッチな内容なので実際に書籍を手に取って読んだ人となると全体で見てもかな~り少ないでしょうね。


 はい、人気があることと面白いことはこの時点で既に直結していないことが分かります。


 分かりやすくするためにソードアートオンラインと戦闘妖精雪風を比較します。

 どっちも面白いとされているので今回は敢えて二つの作品の面白さが同じラインに立っていると仮定しますが、発行部数でも知名度でも売り上げでもメディア展開の多さでもソードアートオンラインの圧勝です。

 でも戦闘妖精雪風が面白さで劣っている訳ではない。

 じゃあこの差はなにかというと、需要の差です。


 より広い需要を満たした作品の方が売れるし知名度も上がる。

 広い需要を満たした方が人が触れる機会が増え、そうなると評価される確率も上がるので当たり前のことです。

 仮に面白さの定義を人気や売り上げだとするならば、より需要を満たしていればいるほど面白いことになります。


 それ、面白さか?

 違うよね。

 上記の原理を用いてより多くの人に受け入れやすいものに寄せ続ければ人気は出ます。でもそれは売れる為の能力であって、面白さとは関係ない。


 もちろん根本的に質が低いものの場合は人気も出ない場合が多いので、質は必要だと思います。でもそれなら戦闘妖精雪風だって質は担保されている。

 もちろんライトノベルとSF小説には様々な差異があるので本来は一概に比較できるものではありませんが。見た目の違いとして絵がありますよね。SF系の作品は表紙は素っ気なくて挿絵はないです。ラノベは表紙、カラーページ、挿絵まであります。でも絵がいいかどうかは小説の面白さとは関係のない話です。だって絵は小説そのものではないもん。絵師ガチャ論は実はせっまい界隈でしか通じないのです。

 挿絵がない本は読まないなんて人もいますけどそれは置いておきます。


 質だけでは人気は出ない。

 人気とは大衆に受けるかどうかだ。

 でも大衆に受けたとてつまらないと感じる人はいる。

 面白さというものは個々の心の中にしかなく、その基準も時代や文化、国家に合わせて必然的に変動していく。

 人気を出す能力は面白さを出す能力とは異なります。

 だから、「面白い小説を書くための能力」はない。


 だったら書いて楽しんだもん勝ちじゃい!!

 ……と、私は思ってます。


 それでも人気が気になるなら小説の質、知識や技術のアプデにこまめに気を配りながらやっていけば「つまらない」から距離を取りやすくなるでしょう。

 それはつまらなくならない方法であって面白くなる能力ではないけどね。どう面白くするかより、自分の書きたいと思う小説に到達するために何が必要かという所から始めた方が自身の為になりそうです。


 もっと細かいことを言えば小説家にも色んなタイプがいるのですが、その話を始めると面白い小説を書くために必要なのはセンスだの才能だのバランス感覚だのといったフワフワした言葉になってしまい、最初の質問の趣旨とズレるので触れません。


 結論。

 「面白い小説を書くための能力」なんてものは考えても仕方がないと気付く能力が必要。

(※あくまで空戦型の独断と偏見による意見です)

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