第15話 エルフの国?
「にーちゃんたち、本当にド田舎から出てきたんだな。しかし、身分証が無いとおそらく関所で止められる。いつもなら追い返されるだけだが、今は関所破りで奴隷落ちにされちまうぜ。何でも献上用の奴隷が足りないって噂だ。そっちのねーちゃんなんかは一発で連れて行かれちまうよ」
奴隷落ちとは穏やかでは無いが、戦国時代にも近いものがあったしこの文明レベルなら当然なのだろう。
「奴隷?献上用ってどういうことだ?」
信長には、“献上用”をいう言葉が引っかかった。王都で奴隷を必要としてるということは、国王の勅命なのだろう。ならば、国王より上の立場の者に献上すると言うことだろうか。
「あんちゃん達、本当になんにも知らないんだな。今年はエルフの国へ5000人献上しなきゃなんないんだが、上半期の2500人はなんとか献上したが下半期の2500人がどうも基準に届かない奴隷ばかりだったようで、追加で奴隷狩りをしているんだよ。まあ、ほとんどが流れ者だから、王都の治安向上にもつながるんだけどな。身分証を持ってないと連れて行かれちまうぜ」
「エルフの国?人間じゃ無くエルフがいるのか?」
信長達は“エルフの国”と聞いて目を丸くした。変な動物が存在していたが、まさか亜人も存在するとは。それではやはりここは異世界で確定だろう。
「えっ?本当に何も知らないのか?本当にド田舎の村だったんだな。人族・エルフ族・魔族・獣人族・ドワーフ族の国があるんだよ。で、今年はエルフ族に奴隷を献上する年なんだ」
「ということは、人族はエルフ族よりも立場が低いってことなのか?」
ラノベやアニメでは、エルフと言えば少数で森に住み、温厚なイメージのある種族だが、どうやらこの世界では違うのかもしれない。
「何言ってるんだ?魔力も体力も無い人族が生きていくためには、他の種族に頭を下げないといけないんだよ。そんなことも知らずに生きてきたなんて、幸せ者だな、お前ら」
信長達は、この世界の情報をかなり得ることが出来た。
・人族の王国は「イーシ王国」と言い、今の国王は「ゾンゲ・イーシ」
・この世界には以下の国家が存在する
エルフ族国家「神聖エーフ帝国」
魔族国家「大トーフェ魔王国」
ドワーフ族国家「バート連邦」
獣人族国家「ティーア合藩国」
・その他、少数部族としてオーガ族やバンパイア族が存在するが、国家の枠組みには入っていない。
・人族以外の国家で、「真・賢人国家連合」を作っており、イーシ王国で新しい国王に代替わりする際は、真・賢人国家連合から戴冠を受ける。
・森には、ゴブリンやオークと言った下等亜人種も存在する。
・人族は一応国家を認められているが、ほとんど魔力を持たないためその扱いは低く、特にプライドの高いエルフや魔族からは、ゴブリンと自分たちの中間であって、亜人に近い種族だと思われている。
・人族のイーシ王国は、真・賢人国家連合に対して奴隷や食料を朝貢している。
・人族も魔力を持ってはいるが、その力は弱く、魔法を使える人間はごく少数。
「人族も魔力を持ってるのか?じゃあ、おっさんも何か魔法使えるのかよ?」
この世界に転移した際に、魔法が使えると言われたがその使い方がわからなかった。自分自身にも魔力があるような感じは全くない。
「こんなしがない行商人が使えるわけ無いだろ。使えるようだったら領主様に取り立てられているか王宮勤めをしているよ。ほんの少しだけ魔力はあるがほとんど使えないのさ。光魔石に魔力を流せば、ちょっとだけ光らせることが出来るくらいだよ」
「へえ、そういうもんなんだ。俺にも魔法が使えるかもしれないから、どうすればいいのか教えてくれよ」
「ああ、そうだな。へその下あたりに力を入れて集中するんだ。それで何か流れを感じることが出来たら、それを全身に巡らせるようにイメージすれば魔力を練ることが出来る。まあ、そうやって何年も練習してやっと魔石を光らせることができる程度なんだがな」
そう言われた信長は、自分のへその下に力を込めてみる。すると、なんとなくそこが熱くなってきて、体の中に流れを感じることが出来た。そして、それを体中に巡らせるイメージをしてみる。
「どうだ?感じることが出来たか?」
「ああ、なんとなく感じるんだが、ここからどうやって魔法を使うんだ?呪文とか唱えるのか?」
「エルフとかは、簡単な魔法なら無詠唱で出せる超上級者もいるそうだが、基本、全ての魔法は詠唱するぜ。まあ、人族は魔力も少ないし、使える魔法はほとんど無いんだよ。エルフ族と魔族が魔法技術を秘密にしてるからな。せいぜい初歩的な火魔法と水魔法に風魔法くらいさ。それでも使えるやつは王宮勤めが出来る。それ以上の高等魔法は、エルフ族や魔族とかじゃないと知らないんだ」
「つまり、おっさんは何も知らないって事か?」
「そういうことだ。本格的に魔法を使いたきゃ、誰かに弟子入りすることだ。ただ、才能が無ければ門前払いだろうがな。ところでこれからどうするんだ?身分証がないと王都には行けないぜ」
「それよりおっさん達はどこに行くんだ?良かったら一緒に連れてってくれよ」
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