1章4話 説明
その人物は白い布を纏っており顔は分からなかった。大広間に集められた参加者は突然の出来事に思考が追い付いてないのかどよめきだした。そんなことはよそにその人物は立ち上がり数歩前に歩んでニマラたち参加者全員を見渡した。
「…………」
口が小さくパクパクしているので何か言っていると思ったがニマラを含め多くの参加者は何を言っているのかは聞こえなかった。しかし、ニマラたちの耳には小さく「なるほど」とぼやきが届く。ニマラにはそれがヒーゾのものであることはすぐに気づけた。
「どういう「諸君」
ヒーゾの方に振り返った瞬間、大広間全体に男の声が響いた。バッと振り返ると白い人物の前に彼の1/3ほどの大きさの黒っぽい獣が立っていた。
「本大会の参加者が全員揃いましたのでルールの説明を行います。」
獣はさらに1歩前に出てお辞儀をした。ニマラは獣が猿であることに気づいた。
「本大会はトーナメントではなく乱闘による勝ち残り形式でございます。まず、ランダムに4つのグループに分かれてもらいます。そこから最終試合に進めるチームを決めてもらいます。各試合前に審判が最終試合に出場できる数を呈示します。試合はその数になるまで続けてもらいます。」
猿は続きまして、と手を2回叩く。すると、床と白い人物がいる空間の間にある壁の部分にたれ幕のようなものが現れた。そこには箇条書きでいろいろ書かれており猿はこれは試合時のルールとなります、と付け加えた。それには次のようなものが書かれており猿はそれを読み上げた。
1.チームのリーダーが死亡、リタイア、"コア"が破壊された等による戦闘不能が確認されたらそのチームは全員退場とする
ただし、リーダー以外の者の"コア"が破壊されても生存していれば退場とはならない
2.リーダーは"コア"を破壊されないようにしつつもう1つ与えられる条件をクリアしないと生き残っていても最終試合への出場は出来ない
3.試合時以外での戦闘、器物破損等の問題を起こした者は即退場とする
4.場外への攻撃厳禁
ただし、場外に出た参加者への攻撃は可とする
5.自分が出ない試合時は自由
6.武器の持ち込み可
「只今読み上げたものは試合時の大まかなルールとなります。次に"コア"についての説明を行います。」
猿は両手をぎゅッと握りゆっくり開くと縦に長い楕円形の青色に煌めく宝石の様なものが現れた。宝石の中に淡い緑の光が閉じ込められており宝石についての知識が無いニマラたちでも玄関ホールにあったシャンデリアを越える物なのではと思えるほどであった。
「こちらは私の"コア"でございます。能力を有している者は1人1つ体のどこかにあります。また、私の"コア"はこのような形ですが人によって色や形が異なっております。この"コア"を破壊せず生き残ることが絶対条件となっております。」
会場全体がどよめきだした。自分の体のどこかに光る宝石があるなんてビックリするのは当たり前でありニマラも同様に自分の体のどこにあるのか探そうとしたがアレックスに止められた。
「では最後、出場する試合についてです。」
猿が指をパチンと鳴らすと会場の中央に大きな赤い箱の上に透明な球体が乗った物が姿を現した。よく見ると透明な球体の中には無数の白いボールのようなものが入っていた。
「ガ、ガチャガチャ?……トイ?……おもちゃか何かか?」
料理テーブル辺りにいる人たちはざわざわと中央に現れた物体についてどよめいており内容はよく分からなかったがヒーゾがポロッとこぼしたことからおもちゃに関連した物なの?とニマラたちは困惑した。猿はそんな参加者を無視して続ける。
「こちらを1チーム1名1つ引きます。取り出したボールに書かれていた数字が出場する試合となります。3と書かれていた場合は第3試合の出場となります。また、これは均等に分かれることはありません。引き直し、他チームと交換は厳禁であります。」
私からの説明は以上となります。と猿は一礼して白い人物の後ろに下がり白い人物が前に出て口を開いた。
「ここに集いし強き意思を持つ者たちよ!だが、今それは言葉だけにすぎぬ。それはここに集えなかった者たちと変わらん!しかし、キサマらはここに集えた!その意味を、力を、意思を、我らに魅せてみよ!」
最初に会場に響いた声と同じ声がまた響いた。しかし、今はもっと言葉が重く響いている気がして心臓がドクドクと鳴り響いている感覚を覚えた。いつの間にか広角が上がっていたことに気付いて片手で胸のあたりを押さえ、もう片方で口元を隠して高揚した気持ちを抑えた。
「我はロキ!ステュクス河に誓って最も強き意思を貫く者にどんな願いも叶えよう!地位、名誉、金、男、女、不老不死、……神になることも……」
会場は今日一番の盛り上りを見せた。
「さぁ、キサマらの運命をまず決めよ」
ロキは中央にある物に指を指した。それを見るや否やトイ?に人々は群がった。全員ではなく1チーム1名と言われていたが目的の場所が1ヵ所だからなのか食事のときよりは密集しているように見えた。
「俺らはあそこが消えたら行こうぜ」
アレックスがふーーっとため息混じりに提案する。却下することなんてなかったのでニマラもダシャもうんうんと頷く。待ってる間にニマラは食べきれていなかったサンドイッチを平らげた。
「そろそろ大丈夫そうだよ」
ニマラが食事している際、ダシャが様子を見ていたようで人が大分退いたようなので伝えに来たのだ。
「もう食べ終わったからいつでも行けるよ!」
「じゃあ行こうぜ!」
「うん!」
「あ、ちょっと待ってて!」
「早よしろよ」
ニマラはたったったッとヒーゾがいる場所へ駆け寄る。
「どうした?」
「私たちのもうあっち行って来ようと思うから」
「そう、私たちはもう少ししたら行くよ」
「うん!じゃあまたね!ありがと!」
「、またね」
ニマラはヒーゾに手を振りながら双子の方に戻った。ヒーゾもそれを見届け小さく手を振り返した。
「トモダチできた?」
「できたかも!」「どうだろうね~」
3人が中央の物体に行くと先程より人がかなり減っていた。遠くからとは違う迫力を感じた。赤い箱には銀色のざらざらとしたつまみとボールが入りそうな四角い空間があった。つまみの上に反時計回りの矢印が書かれていた。
「この方向に回す、のかな?」
「じゃないの?」
「ニマラ回しちゃえ」
「え、私!」
「やっちゃえやっちゃえ」
「え、だ、ダシャやりたくない?」
「え、気分じゃない」
「あ、ハイ、」
ニマラは銀色のつまみな手を掛ける。ざらざらした見た目にしては強く握っても痛くなかったし人が触れたとは思えないほど冷たかった。
「…………」
ゆっくり深呼吸して矢印に沿ってつまみを回した。ガコンと球体部分から音が鳴りカコンと何かが落ちた音がした。音の元に目をやると何もなかった四角い空間に白いボールが1つ入っていた。取り出しくるりと見ると黒く"1"と書いてあった。
「これは、つまり……」
「1番最初の試合ってことかな?」
「ふーーーーー」
引き直しも交換も許されない。ここに来たからにはもう引き返すことなんて絶対できない。彼女が出きることは腹を括ることだけ。
「よし!絶対勝とう!」
「お!」
「!よっしゃ!」
「終わったか?」
「!!!」「うわぁ!」「うぇえっ!」
3人が声のする方に振り返るとここまで案内してくれたツカイノモノが気配もなく立っていた。
「び、びっくりした……」
「さあ、行くぞ」
ツカイノモノは興味が無いのかニマラがてにしているボールを見てついてこいと言うように広間の奥にある扉へ向かった。ニマラたちはワタワタとついていった。
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