マスカレード・パレード

春川楓

第1話

私は今日も、偽りの仮面をかぶる。

学校生活が平和に送れるように。

いつも教室に入る前は、深呼吸をしてからドアを開ける。

「おはよう。愛莉あいり

友達に声をかけられて笑顔を作る。

「おはよう」

「ねぇねえ、昨日のテレビ見た?今人気の俳優が出てたんだけど、かっこよくなかった⁈」

「うん。見たよ。かっこよかったよね!」

友達との会話についていけるように、テレビやネットの情報は欠かさずにチェックしている。

「あとさ、最近新しく出たコスメ、一緒に見に行かない?」

「うん。いつにする?」


波風を立てず、平和に過ごすのが一番いい。

今までだって、そうやって生きてきた。

「でもこんな風にしてても、楽しくないなぁ」

自分を偽って、周りに合わせていても、自分が楽しくなければ何の意味もない。

学校の帰りにそんなことを考えながら歩いていた。

「あなた、そこのあなた」

考え事をしていたせいで自分が話しかけていたことに気づくのが遅れた。

「え?私ですか?」

足を止めると、ステッキを持った男性が立っていた。

「退屈そうな顔をしていますね。よろしければ、こちらにいらっしゃいませんか?」

そう言って、手に持っていたステッキで地面をトンと叩いた。

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