第36話 「タクトの決意表明」
レイアが私を連れてテレポートした場所は、とある何の
「ここは一体? 行き止まりみたいだけど」
私がイグノール達と魔王城を攻略した時は、最短ルートを探って上を目指したので、今いる場所がどこなのかわからなかった。
「第七階層迷宮のネズミ返しの一つだ。少しだけじっとしていてくれ」
レイアの指示に従い、様子を見守る事にする。レイアが呪文を唱えると、行き止まりの壁から扉が浮き出してくる。
「おお! これは隠し扉か?」
「そうだ。人間がここまで来た事はないな」
レイアは扉を開け、中に入る。続いて部屋に入ると、
「魔王様、早速お越しいただき
私達はアシュレに案内され、文官達の待つ場所へと向かう。
「アシュレ、
「魔族の長達から戦争の準備が間に合わないと報告が来ておりまして、対応に追われております」
「わらわのドッペルゲンガーが対応しておろうが」
「実は、対応に
「そうか。では文官達に話を聞こう」
文官達の働くスペースに到着すると、彼らは私達を迎えてくれた。
「ご足労頂き感謝いたします、魔王様」
「うむ。その前にわらわのドッペルゲンガー達を呼んでくれ」
「かしこまりました」
文官の一人がテレポートで消えると、程なくして三人のレイアを連れて戻ってくる。彼女達はそれぞれ赤、青、緑のドレスを着用している。
「レイアが三人も!!」
「驚いたか? 紹介しよう。彼らがわらわの仕事を手伝ってくれているドッペルゲンガー達だ」
レイアの紹介に呼応して、三人のレイアが変身を解いていく。灰色の肌をしたスキンヘッドの人型の生物は、眼がタコに似て、口が無く、ひょろ長い手足で、足のサイズと指の長さが人間の倍の大きさに見える。
「はじめまして、タクトです」
私が
レイアが私とのやり取りを見届けて、文官達に向き直る。
「早速だが、状況を説明せよ」
「実は、ナイトシェイドとラークシャサの長から
文官の一人がレイアに事情を説明し始める。どうやら彼らはこの戦争への参加を拒否しているという事だった。その対応をレイアに求めているようだ。
「そうか。少し待っておれ」
レイアが文官達に答えると、私を見て意見を求める。
「タクト、今意見して来ている種族は、魔法に
レイアの提案は私にとって実に魅力的であり、計画を成功に
「ぜひ会ってみたい。でも、その前にやりたい事があるんだ」
「やりたい事とは何じゃ?」
「うん、国のみんなに話したい事があるんだ。放送はできるかな?」
「ああ、できるぞ。いつ始めたいのじゃ?」
「今から準備できるかな?」
「あいわかった。しばし待ってくれ」
私の申し出をレイアは受け入れ、文官達には問題を引き受けるので任務に戻るよう指示する。さらに文官の一部に放送のセッティングを指示したレイアは、十分後には放送の準備を整えてくれた。
「思う存分話すがよいぞ、タクト」
「ありがとう、レイア」
私はレイアに
「――リータ魔王国の皆さん、突然の放送ですみません。どうかそのままで聞いてほしい。私は魔王クライスラインの夫、タクト=ヒビヤです」
各地で私の声に反応する魔族達が映っている。私は続ける。
「先日魔王クライスラインから発表があった通り、異世界から召喚された人間の私は、魔王と結婚しました。そして今、リオリス魔王国から宣戦布告を受け、戦争に向けての準備を魔王と協力して進めようとしています」
モニターの中には私の映像に反応する者も現れ始める。
「私は人間だが、この国を立て直すため、戦争に勝つため、そしてこの国の魔族の皆さんのために働き、力を尽くす事を約束します。その上でこれから私がやる事は、この世の善でも悪でも
私の言葉に、作業の手を止める魔物達も出てくる。私は頭の中の計画を
「私がやろうとしている事は、
計画の全容が魔王国中に伝わる。驚き、立ち上がる魔物もいる。私は話を続ける。
「今話した計画を、私と魔王の結婚式が終わってから着手し、戦争の前日までに完成させる予定です。しかし、私がやる事を受け入れがたく、理解できない方もたくさんいると思います。だから、皆さんの意見、知恵と力を貸してほしいのです」
私の狂気とも言える計画と依頼を魔族の者達は黙って聞いている。
「計画は進めますが、皆さんの意見を盛り込んで行いますので、協力をお願いします。私は魔王と共に、そして、皆さんと共に生きていく事をこの場で
私は深く一礼した後、モニターを見渡す。反応は様々だが、文官達や部屋にいる魔物達は拍手して私の演説を好意的に受け入れてくれている。私は文官に合図し、モニターのスイッチを切ってもらう。私の中にあるものをほぼすべて伝える事ができたと思う。
「実に良き演説じゃった。さすがわらわが認めただけの事はある」
レイアが
「ありがとう、レイア。君のお陰だ」
「じゃが、最後の言葉は
レイアが思い出し笑いをしている。確かにちょっと蛇足気味だったが、魔族達も笑っているのだろうか。
「必死過ぎてつい出てしまった。笑われても仕方ないか」
「そうじゃな。まあ皆にも伝わったじゃろうて。それと計画の事じゃが、各魔族の長に伝令を送って意見を集めさせる。
「ああ、助かるよ。ありがとう」
私の計画がこの国の魔族達に受け入れるかは不明だが、この国を完全に立て直す第一歩は
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