第15話 長宗我部元親


 土佐複合基地と安土城・中村御所支店を完成させた織田信長。


「もう4:30か元親が起きる前に岡豊城の門・城壁・土塁等の防御施設を全て収納してくる。

 和真!尾張6~8号の3隻、イージス戦闘艦15隻、鉄鋼軍艦60隻を余の転移で連れて行く。

 轟音と火煙が凄い戦艦大和の主砲を設置しておくゆえ、それを放ち度肝を抜いてやれ。

 元親め、どんな顔をするか見物だなw」



 2月9日 5:30 土佐国 岡豊城


 ドタドタドタドタドタ!!!


「殿!とのーー!!一大事に御座います!!」


「暗いうちから何事だ!夜襲か!!」

 既に起床し身支度を整え、座禅を組み瞑想をしていた長宗我部元親。

 緊急事態を察知し部屋から飛び出す。


「それが。。。無いのです!城壁も門も土塁も何もかも消えておりまする!!!」


「…………寝惚けるなジイ…少し疲れておるのではないか?」


「武器防具を装備し、城壁の場所までお願いします。」


「…分かった今行く!!」



 5:50

 尾張6号艦内司令室


 主だった防御施設を音もなく収納した信長。帰蝶のギフトで貰った岡豊城周りの古地図を持ち出し、地形等を詳しく調べている。


「ほお詰下段とニの段に井戸があるか。南の国分川と一緒に地形ごと全て収納して水流を断ってやるか。」


『シュン!』


「岡豊山の木々も時間加速エリアで乾燥させれば、直ぐに材木として使えるゆえ貰っておこう。」


『シュン!』


 標高97m緑豊かな岡豊山が土肌剥き出しのハゲ山になる。

 城の南側を守るように、天然壕の役目を果たしていた国分川も水が干上がり川底が見えている。


「取りあえず今はこんなもんで良いか。2月でまだ暗いが、陽が出てきたら流石に驚くであろう。」


 **********


 6:00

 "土佐の出来人"と言われ家臣からの信頼厚い長宗我部元親(31歳)。

 まだ暗く視界不良のまま庭に出ると、木々の音さえ聞こえず、風の流れが直接叩きつけてくる異変に気付いた。


「これは!!天変地異か!!ただの裸城では無いか!!」


 信じられない出来事に家臣の前で取り乱す元親。

 その時!!土佐湾から轟音が響く!!

 ドガーン!ズガーン!バァーーン!!


 暗さに目が慣れてきた元親に

 桂浜の沖合いに山影が三つ見える。

 その山から激しい火炎が見え何かが発射されていた。


「なんだと言うんだ!この轟音!それに何故あんな場所に山が出来てる?」


「殿あれはもしや船では?」


「船だとーー?」


「今少し明るくなれば全容が見えまする。」


「…船…火炎…轟音…戦船か?

 ジイもしあの山が戦船なら、戦国武将としての長宗我部元親は終わりだ…戦どころか小競り合いにすらならん。

 無条件で降伏するか虐殺されるかの二択しかないやき…」


「殿………」


 2月9日 7:00 土佐国・土佐湾沿岸


「あんな物が浮かぶのか……」

「超巨大船3隻、巨大船15隻、特大船60隻……」

「こんなにいたのか…」

「鉄が浮いてる…」


 夜が明け東から日が昇ると織田水軍の全容が明らかになった。

 あまりにも異様な艦隊!

 そして長宗我部家一族郎党、家臣団だけでは無く土佐の民衆達ですら、これがもし敵対勢力であれば "土佐の出来人"の世も終わりだと直感していた。


 イージスシステムを搭載しイージスミサイル1,000本を弾薬庫に装備している尾張型戦闘艦。


 本来全く必要としない戦艦大和の主砲。

 デモンストレーション用に信長がチート錬金術で、口径46cm砲を3門・3連装砲塔とし前甲板に2基、計6門を搭載。最大射程41km。


「和真!第5軍団長の慎之助は余の命により、淡路島海軍基地の詳細整備に勤しんでおる。

 よって本日は織田家土佐・陸海空軍複合基地の司令官として、この艦隊の指揮を取れ!

 余は督戦に徹するゆえ口は出さぬ。但し敵兵・民衆1人も殺さず見事威圧して見せい!」


「は!この岡本、尊敬する大先輩である阿部第5軍団長の兵を指揮し、御館様の御期待に答える所存!ご免!」


 力強く返事をし岡本は中央指令室に向かった。


「さて和真のお手並み拝見といくか。長宗我部元親相手に艦隊をどう展開させるか?1人も殺してはならぬと言うのが難題じゃがな。」


 史実とは違い我慢忍耐を覚え、周囲にもしっかりと織田信長。


「本能寺で1度は死んだ身。人を育てるにはまず余が自ら変わらねばならぬ。和真、思う存分励めよ!」


 これが、後の世まで"馬揃え"になぞられ語り継がれる、

 "土佐湾沖・織田海軍船揃え"の始まりである。


 **********


 2月9日 8:30 土佐国・岡豊城


「「「。。。。。」」」


 長宗我部元親

「見事だ。。。。。」


「殿、あれに海戦を仕掛けても四半時と持ちませぬ。。。」


 元親

「ああ、どれだけ習練を重ねれば、あの様な一糸乱れぬ艦隊行動が取れるのか。。。」


「総数78隻!しかも全てが特大の鉄船ばかりで、あの速さ!!」


 元親

「あれだけ大きい船だ。1つ間違えれば味方どうし激突、大惨事になろう。」


 30分前に始まった織田戦船の艦隊行動。

 実に華麗で見事な旋回運動。

 トリッキーなジグザグ突進。

 スピードを見せ付けるため、土佐湾東から西への直進往復リレー。

 それを同時に艦船同士が交差しながら、衝突せずにやり遂げて見せた。


 最後に織田家岡本和真司令官は、長宗我部家の戦意を根こそぎ砕き恐怖心を叩き込む軍事行動を取る。


「よし!各自打ち合わせ通り、3個小隊から1個中隊に陣形を編成し直せ!5分で所定位置に着け!!」


『いくら意思の疎通がテレパシーで可能なAndroid兵達でも、これだけの艦隊を5分で編成組み直せとは、余でも言わぬわw』

 主君信長も真っ青である。


 和真はまず1個小隊を

 尾張型1隻

 イージス戦闘艦5隻

 鉄鋼戦闘艦20隻

 にて編成を組んだ。それで旋回ジグザグ、直進往復艦隊行動を30分間実行。


 最後に尾張型3隻を中央に据え、その周りを15隻のイージス戦闘艦、最外周部を60隻の鉄鋼戦闘艦で囲み1個中隊とした。


 和真の指示通り5分後、尾張型3隻を中心に芸術的な輪形陣が完成。


「「「うわあーー」」」

 呆気に取られる土佐民衆


「「「おおおおお!!」」」

 長宗我部家臣団からは感嘆の声が


「「「。。。。。。」」」

 元親と重臣達は冷や汗と脂汗全開で黙り込む。



「よし!尾張型3隻は主砲46cm砲を全6門・イージス戦闘艦、短距離300kmイージスミサイル模擬弾を日本海へ・鉄鋼戦闘艦は炎だけが派手な模擬弾!それぞれ発射準備!!」


 あらかじめ和真は信長のチート創造で作った、偵察ステルスドローンを四国中に50機放ち、無人地帯を確認している。


「全艦発射準備完了!!」

 井上侍大将改め、陸海空軍複合基地参謀長から伝達が入る。


「いいか総員よーく聞け!!我々は脳内シュミレーションで超高速AI学習をした。先程まで見事その通りに動けたのだ。

 最後の大花火!派手に打ち上げて土佐中のドギモを抜いてやれ!!

 先鋒!鉄鋼戦闘艦!発射!!」


 60隻全てから炎だけが派手な模擬弾が、土佐沖西側2kmの海上に発射される。


 その爆裂、業火に民衆達は怯え悲鳴をあげる。

「きゃーーーーー」

「ひいーーーーー」

「た、たすけてーー」

 その模擬弾は1発も自分たちに向かって来ないが、初めて見る圧倒的火力に恐怖心から集団パニックに陥っていた。


「次!イージス戦闘艦!天空高くぶっぱなせ!発射!!」


『シュッーーーーー』

 発射煙を撒き散らせ、15隻のイージス艦から勢い良く飛び出すミサイル。


「天空に。。。消えた。。。」

 既に脱力している元親は、己の膝と腰が抜けた感覚に気付く。

『無理やき。。。我の首で家臣領民の命を助命嘆願するしかないやき。。』

 覚悟を決めた元親だったが、そこに止めを刺す和真!


「最後の締めだ!尾張型3隻!戦艦大和の主砲6門5連発、右手の山に放ち更地に変えろ!偵察で人っ子1人いない!!放てーー!!」


『ドン!ドドン!ズドン!』


 信長の創造によりタイムラグ無しで連発可能になった、大和の46cm主砲6門からそれぞれ5発、1隻あたり30発が3隻、計90発の艦砲射撃を受けた。


 爆音!轟音!濃厚な煙!撒き上がる土砂、崩れる崖・岩石

 地獄を思わせる壮絶な光景に、織田家以外の人間は皆両手で耳を塞ぎ、膝から砕ける者、腰が抜け立っていられない者、うつ伏せになり目を閉じてガタガタ震えている者。。。


 武将も民衆も元親すら喋るのを忘れ、肺が苦しくなり呼吸すら途切れ途切れになる。


「「「「「………」」」」」


 煙が晴れるとその場所には、かつて山だった物は消え去り、でこぼこに崩れ去った更地が出現する


 シーーーーーーーーーン


 沈黙を引き裂くように大型スピーカーに乗った岡本司令官の声が響き渡る。


「長宗我部元親殿!そして土佐の国衆の方々!我々は織田家第5軍団、織田鉄鋼水軍である!

 本拠地は土佐中村御所!!興味あらば何時でも見学に来るとよい!!

 本日の軍事演習、普段の力の半分も出していない。明日も来るが何時かは言わん!せいぜい楽しみにしておれ!」


 そう言うと岡豊城に背を向け

「総員、退却!!」


 それこそあっという間に土佐湾の西側、中村御所の方角に全速力で進む織田艦隊。

 元親を筆頭に長宗我部家の人々は黙って見送ることしか出来なかった。


 **********


 尾張6号指令室


「和真!!良くやった天晴れ見事である!!」

 信長が大任を果たした和真を労うため指令室に入ったのだが


「御館様、岡本司令官はオーバーヒート中にて1時間の猶予を下さりませ。」


「なっ!!頭から煙りが出ておるぞ!!井上!!」


「大したことはありませぬ。我々Androidには疲労の極みに達した場合のみ、起こり得る現象にて。1~2時間で元通りになりますゆえ。」


 そう言われても自分が創造したAndroid達に、我が子のような情を持っている信長。


『帰蝶緊急事態だ!今すぐ迎えに行きたいが大丈夫か?』


『はい殿、目の前でも問題ありませぬゆえ。』


 10秒足らずで帰蝶を連れ阿波国から戻った信長。


「まあ岡本司令官!」


 帰蝶が左手をかざすと、真っ白な神々しい光が和真と井上参謀長の全身を覆う。


「う、う~ん……はっ!ここは」


「おおー!和真!!」


「岡本司令官もう大丈夫ですよ。役職の重さから今後も負荷が増える可能性が高いので、チート回復でAI知能をバージョンアップしておきました。

 全体的に能力倍増、特にシュミレーション部分は3倍増しです。井上参謀長も同様ですよ。」


「濃姫様。。。サイコーです。」


「おい和真!そのサイコーですとは何じゃ。バグっておるのか?落語にそんな落ちはないぞ。」


「まあまあ殿様、岡本司令官も短時間でディープラーニングを駆使した結果倒れたのです。バージョンアップしたとは言え1時間は冷却期間を置いてあげて下さい。」


「うむ、分かった。

 和真、地元の漁民達に艦隊の姿を見せるのも良いであろう。十分な威圧になる。

 転移を使わずこのまま複合基地に向かうゆえ、そのあいだ自室にて冷却しておれ。」


「はっ!では失礼します。」


 和真は部屋に下がったが井上参謀長の様子がおかしい。


「ううううう~俺はいま猛烈に感動している!!」


 自分の体とAI頭脳が明らかにパワーアップしたのを実感している。

 涙を流しながら拳を握り締め、熱血野球漫画の主人公さながら仁王立ちする井上…


「星か!!」

「飛雄馬か!!」


 夫婦二人に突っ込まれました。


 **********


 尾張6号・信長専用提督室


「殿、治療と同時に岡本司令官のAI頭脳を鑑定したのですが、履歴によると土佐湾軍事演習のシュミレーションが原因です。

 単独で何度も超高速処理をしディープラーニングを重ね、それを3万のAndroidにテレパシーで共有させております。

 それでも時間の猶予さえあれば、殿のチート創造Androidですから問題なかったのですが、転移移動の結果その時が得られず短時間での無理が生じたかと。」


「なる程。。。単なる移動には便利な転移だが、作戦行動を練る時間は無くなる訳か。。。そこは余も盲点だった、気付かせてくれて礼を言うぞ帰蝶。」


「いいえ殿と二人で天下布武の道を歩むのです。この様な事は私の職務ですからお気になさらずに。

 それよりこの際30万のAndroid全員にバージョンアップを施したいのですが、いかがでしょうか?」


「構わん是非とも頼む。余と帰蝶、それに織田一族に反乱もしくは征服欲を抱いただけで、動力である余の神力提供が自動的に止まる設定で創造しておる。

 例え力を持ちすぎても我等二人が存命中は、余の命令以外で人間に逆らう事は無い。」


「するともし二人が同時に亡くなったら30万のAndroidが人間に牙を向くと。。。。。」


「ゲネシスもそこを憂いておってな、特別のなるものをAndroidに枷として2つ付与してくれた。

 あの者達は余と帰蝶が亡くなると同時に、この世から消滅する。そこには欠片すら残らないそうだ。

 それともう1つ子孫が残らないよう、生殖活動は営めても子種が無く人との間に子は出来ぬ。。。

 余としては不憫な気もするのだが、ゲネもその2点はとして絶体譲らないと言っておった。」


「そうですか。。。その様な枷が。。。何だか和真や井上と話していると殿と私の実子のような感情が芽生えてしまいます。

 1つ目の枷は致し方無いとしても、2つ目は。。可哀想ですねぇ。。。」


 史実に残っている資料の殆んどが、濃姫は生涯子を授からなかったとされている。

 嫡男織田信忠の生母は38歳の若さでこの世をさった信長側室・生駒吉乃。

 それをゲネシスからのギフトで知っている信長は、慎重に言葉を選びながら語りかける。


「ああ和真等が人間の娘と結ばれても子は出来ぬ。。

 それでも双方が良いなら誰と恋愛し婚姻しようが構わん。だが子種が無いと分かった時、相手の娘やその家族達がどう思うか?

 これから親交が深まれば、和真等と己の娘との婚姻を望む家臣も出てくるであろう。

 そこが難しいところよ。。。」


とあらばゲネシス様にこれ以上無理は申せませぬ。その事は追い追い話し合っていきましょう。1日も早く天下統一を成せねばなりませんね。

 では殿、阿波国へお戻し下さい。まだ500人ほど鑑定が済んでおりません。明日には讃岐国で鑑定回復する所存ですのでお願いいたします。」


「うむ、苦労をかけるが頼む帰蝶。」


「はい、おまかせあれw

 ああ~ではその前に第5軍団3万人バージョンアップしても宜しいですか?」


「無論だ。。しかし全員となると1ヵ所に集めねばなるまい。

 尾張6号のに連れてくるか。1万人しか入らぬゆえ3回にわけるがな。」


「御懸念には及びませぬよ殿。ではチート・エリアヒール」


 78隻の艦船全てが白く光りAndroid兵3万の歓声が響き渡る。

 濃姫からとてつもない神力を感じた信長


「帰蝶!この優しげな温もり…何を致したのだ。」


「はい、私の半径5km以内ならチート・エリアヒールの有効範囲です。全ての兵士アップが終わりましたよ殿w」


「余も大概だがお前も。。。まあ良い。。では阿波へ向かおう。」


 何ともはや神が二人も降りてきた織田軍団。この様子だと明日2月10日には四国平定を成し遂げそうです。。。たった3日間で。。。



 ーーーーーーーーーーーー


【10式戦車信長チート錬金(改)】

 外見的サイズは陸上自衛隊10式戦車と同じ。

 10式の主砲が44口径120mmなのにたいしてチート錬金(改)は46口径150mm。

 速度は前進・後進共に150km

 動力は信長創造のスーパー充電器

 なお信長創造軍事兵器のは全てこれになる。


 スーパー充電器サイズ

 厚さ5cm・1m×1m・重量15kg

 これ1台で1,000万kwh充電できる。

 スーパー太陽光発電との併用でフル充電所要時間わずか1時間。

 軍事行動など過酷な使い方でも平均10年の使用に耐える。

 一般家庭企業だと18~20年ほどで寿命を迎える。

(因みに濃姫のチート回復付与を貰えれば5千年は持つw)


 信長は自身の存在が消えた後の世を危惧して、既に1000億台を創造済み。

 それと詳細な製作過程・金型・材料・特殊部品・図面等々も用意し、技術者の人材育成に力を注いでいく予定を立てている。


(参考資料)

 4人世帯1日の平均電力使用量13kwh

 1,000万kwhだと約77万世帯の使用電力を賄える。


 東京都の世帯数が約722万世帯なので、10枚あれば楽勝です。

 ですからm(_ _)m

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