第2話 狭間にて濃姫との再会
心地よい風と鼻腔をくすぐる香り。
あまりの気持ち良さに
「うぅ…ここは…黄泉の国なのか?」
「殿、お目覚めですか?」
聞き覚えのある、心が落ち着く声に視線を向ける。
そこには
「おお
「はい。妙覚寺を出て二条新御所に移ったのですが明智の大軍勢に囲まれ、三法師(織田秀信)を逃がすのが精一杯でした。」
「上出来だぞ帰蝶!信忠嫡男三法師さえ生き延びておれば、織田家嫡流は後の世に存続する。
あのキンカンではわしを討ったところで天下は無理だ。
今頃サルが毛利と和睦し京の都に取って返してる頃だろう。
細川も筒井順慶も勝ち馬に乗り、キンカン討伐に加勢するようサルに誘導されるはずだ。」
「サルとは羽柴様ですか?今は備中高松城を攻めていると聞いてます。まさか中国路を駆け抜けて帰ってくるのですか?」
「ああ、わしならそうする。織田家弔い合戦として謀反人明智光秀を討つ。これ程の美味しい大義名分が目の前にぶら下がっておるのだ。
あの目敏いサルが絶好の機会を逃すわけがなかろう。」
「織田の家はどうなるのでしょうか?」
「それよ。ここに信忠が居らぬと言うことは、もしや生きておるのではないか?」
「新御所に移ってからはお会いして居りませぬゆえ、分かりません。」
「ふむ、それよりここは本当に黄泉の国なのか?
ただ真っ白いだけで帰蝶とわし以外に何も感じぬが?」
その時とつぜん霧が晴れたように1ヵ所だけ空間が現れる。
「よお信長に
ニカッといたずらっ子のように笑う1人?の青年。
「なに奴!」
「丸腰に決まってるだろ、これでもここは天界だ。
俺は空間創造を担うゲネシスってもんだ。
日本では古事記に書かれてる、
まあ長ったらしいから、
俺も織田三郎等とは呼ばん。
諱の信長と呼ばせてもらう。
この場所は正確には天界その物ではなく、
桶狭間で天下に名を売った信長にはうってつけの場所だろw」
「……諱の件はもういい。してゲネシス今ここに連れてきたと言うたが、わしと帰蝶に何か用があるのであろう?」
「ああ気の短い信長には単刀直入に語ろう。
「どうやら世迷い言の類いでは無さそうだな。して転生させる目的は何だ。」
「気に入らないからだ。今回の"本能寺の変"がな。」
「申せ」
顎をしゃくりながら先を促す信長。
「織田信長ほどの人物を討った明智光秀が、僅か11日後に羽柴秀吉に討ち取られる。
だがその秀吉も"豊臣"秀吉と改名。
草履取りをしていた頃の自分の大志を忘れ、やる意味のない朝鮮出兵で国力をすり潰した。
挙げ句の果てに18年後徳川家康に豊臣家は滅ぼされる。」
「サルめ権力に溺れたか。
辛抱強い
「権力に溺れるどころか三法師を傀儡にして織田家を乗っ取り、お市の娘・
「…あの猿面冠者め!今ここにサルを連れてこい。その首をへし折ってやる!!」
「それは無理だ。ここは天界と現世の狭間にある世界。
輪廻転生の資格有りと神界で認められた者のみ、滞在が許される空間だからな。」
「………申せ」
「本題に入るぞ。信長が50歳にも満たぬ若さで死んだ事により、その後の日本がつまらない島国に堕落した事だ。
乱世に苦しむ民百姓のため、圧倒的武力で戦乱を終わらせ世を平定する。それがお前の夢"天下布武"だろう。」
「竹千代でも乱世終息は無理だったか…」
「いや、徳川は戦国を終わらせ江戸に幕府を開いた。
そこまでは合格だがあの狸は鎖国をしやがった。」
「…交易を閉じるなどと…愚かなことを…」
「まあ理由は色々あったがな…それで約260年後に外国勢力との密貿易で、新型銃器を手に入れた薩摩長州等に倒される羽目になる。」
「薩摩長州による倒幕か…密貿易とは幕府側の屁理屈であって、薩摩等の諸国からすれば外国勢力と交易をしているに過ぎぬ。
竹千代も初代将軍として外国との楽市楽座を幕府の
感慨深げにしみじみと語る信長
「殿。
殿が亡きあと、戦乱の世を平定することに全力を捧げたのでしょう。
260年も先の事より、幕府の基礎を作ることで精一杯になっても致し方無きことかと。」
濃姫も当時を懐かしむ様に語りかける。
ゲネシス
「それなんだよ!お前達夫婦をここに呼んだ理由。」
信長
「なる程、して何時の世で生を賜れるのだ。」
濃姫
「お待ち下さいませ殿。ゲネシス様も何がそれなんだよ!なのか?説明して下さいますか。」
信長・ゲネシス
「「知っているくせにw」」
濃姫
「……一応御説明下さいませ。……」
ゲネシス
「まあ良いだろ。幕府の鎖国・薩長連合の倒幕を話しただけで、二人ともその政の愚かさ、交易の大切さを理解している。
それだけの人物を本能寺の変ごときで失うのが気に入らないんだよ。
俺は創造神だ。物事を完成できず中途半端に終わる悔しさを一番理解している。
そこでだ、もう一度やってみないか?
信長の作りたかった世の中、それを支えたかった濃姫。
二人の人生をやり直してみないか?」
「みないか?と疑問的な言い方ですが、"断わる事は出来ないぞ"と先ほど仰ってましたよ。」
「ふん、お濃の言う通りだ。やり直しか…まあ良い。
永禄13年(1570年)の正月に戻れるか?元亀元年(同年)4月23日でも良いが…」
「よほど堪えてるのか、金ケ崎の退き口が。」
「あれは義弟をみすみす破滅に追い込んだ。
もう少し時を掛け、長政が完全に浅井家を掌握するよう支援するべきだった。
わしが落ち着いた采配をふるい軍事行動を舵取りしておれば、その後志賀の陣も起こらず実弟信治と森可成…
長島一向一揆でも弟の信興も失わずに済んだ…わしの短気な気性のせいで有能な弟を三人に忠臣・可成を失なった…お市を後家にし茶々等三姫の父親を奪った……」
「殿…あの時、殿の決断はお見事でしたよ。どうか御自身を責めぬよう…」
「そんな話を信長本人から聞いたら願いを叶えてやるしかないか…結果を知らない未来に送るなら無条件なんだが、過去となると1つだけ条件がある。」
「聞こう」
「織田幕府を開く地は徳川と同じ江戸だ。
尾張、美濃、畿内や安土城の近江等では駄目だ。
そして都も京都から江戸に移すため江戸の地名を東の京、
「遷都するのか?」
「ああ、帝も東京に移ってもらう。1180年の平安京以来だから390年ぶりだな」
「1180年?」
「日本独自の年号だと計算が複雑になる。1180年の表記は後の世で西暦と呼ばれている。永禄13年の正月なら1570年だ。
1570-1180=390年 簡単だろ。
実際に幕府を開くのはもう少し後だろうから、400年ぶりとかになるかもな。」
「なる程その西暦とやらは便利だな。織田家中においては早速それに統一する。帝にも申し上げておこう。」
「よしじゃあ決まりだな。
1570年1月1日5:00に送ろう。
天下の織田信長が36歳から人生をやり直すんだ、手土産をやらないとな。
空間創造を担う創造主ゲネシスの土産だ、チンケな物は送らないぞ。」
「ほお良いのか?ただでさえ先の世が見える有利な状況だと言うに。」
「構うもんか、1日も早く織田木瓜と永楽通宝旗印の織田幕府軍が見たいからな。
信長にはチート収納とチート転移それとチート創造錬金コピー術を与える。
濃姫にはチート鑑定にチート結界聖女には付き物チート回復術だ。」
二人の体が光輝いた数秒後。
そこには身長2m超えの大男になった信長と、同じく背が高く美しい八頭身美人の濃姫の姿があった。
「お濃…一段と美しさに拍車が掛かっておるぞ!」
信長も見惚れる美しすぎる濃姫。
「殿……見上げるほどの大男!胸板も分厚くまるで金剛力士像の様な体躯に御座います♡」
そう言うと濃姫は信長の胸に顔を埋めた。
「あっーーーーーと狭間とは言え一応天界だぞ。イチャイチャするのは地上に降りてからにしろw」
「ぐむっ……ゲネ!さっさと1570年に連れて行け!!」
「ゲネって…呼捨てだけでも神を冒涜する不届き者だが、ゲネシスの短縮ゲネ呼びとは…これでも空間創造神なんだが…さすが第六天魔王だな。」
「しかしゲネよ、身体中に力が漲っておる。
何が起きているのだ。」
「二人とも頭の中で
「これは!自分の能力が詳細に見えるのですが、いったい何がどうなっているのですか?」
「凄いなこれは!己の能力が詳細に記されており一目瞭然だ!」
「土産のチートスキル以外にも能力や加護等、色々付けておいた。有効利用して1日も早く乱世を終わらせるんだ。
その先は二人に任せるが俺を失望させるなよ。」
「
「帰蝶も夫信長と共に誓い奉ります。」
「急に改まりおって……
神である俺は管理者とは言え、直接干渉が出来ない身だ。
日本の行く末を使徒である二人に託す!頼んだぞ。では行け!」
光に包まれ信長と濃姫は狭間から消え地上へと向かった。
「二人ともすまんな。過去に戻るということは結果が分かっている事だらけだ。
だから1つ位わからないよう寿命は隠蔽した。
信長566歳、濃姫565歳。
530年後の2100年まで人間としては少々長いが、同じ日時に共に黄泉の国へ旅立てる。仲睦まじく頑張ってくれ。
な~に530年なんて俺にとっては一瞬だw」
空間創造神ゲネシスの使徒として1570年に戻った信長と濃姫。
織田家と日本をどの様に導くか?
ゲネの期待値もSSSレベルに達してます。
********************
西暦2100年
令和6年の76年後までチート織田信長と濃姫が存在する世界。
日本だけでなく世界中がどんな風になってるのか?
想像するだけで楽しいと言うより、そこで暮らしてみたいなと思うのは自由ですからw
*****
"そこには身長2m超えの大男になった信長" の表現があります。
ゲネシスが信長と面識のある全ての人々の記憶を少しだけ弄り、急に大男になっても違和感を感じない御都合主義です。
m(_ _)m
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冒険者ランクSSSタイセー・ヨミウリ人外記
完結してます。
どうぞ宜しくお願いします。
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