第14話

「ヒック…キンチョウの夏…ヒック」


「今は夏じゃないし、春だし。」



 ビンタした彼、"竜彦"と呼ばれていた彼が私にそうツッコミを入れてくれた。



 そうか、今は春なんだ。



 私がいた世界でも春が迫る3月の終わりだった。



 違う。今はしみじみと季節に気を取られている場合じゃない。そうだ、彼女はビンタされたんだ。



 私は彼女の元にしゃがみ込んで、そしておそるおそる彼らを見上げた。



「あああのっ!!ヒック、いくらなんでも女性に手をあげるなんてヒック酷くないですか?!」



 しゃがんだ身体を支える自分の脚が震える。ぶるぶるぶるぶる



 それでも私は、簡単に手を上げることに黙ってはいられなかった。



「…はあ?その女はそういう役割の女なんだよ?」


「や、やくわりヒック?!」


「君はもういいや。ウザい。まだうちの連中全員からの罰が待ってるんだから、さっさと立てよモニカ。」



 彼女を爪先で蹴ろうとした一人称"僕"の彼。



 最初話した時とはまるで違う、威圧的なオーラをまとう姿がモニカさんを更なる恐怖に陥れた。



「いやぁあぁあッ!!!もう好き勝手犯されるのも叩かれるのもこりごりよぉっ!!」



――――――――



 "好き勝手に犯される"


 "叩かれる"



 私の元いたゲームの世界も、似たようなものだった。

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