第12話

「…君さ、ここで僕らの邪魔立てするようであれば君にも同行してもらうことになるけど。」


「…どこに、ですか?」


「どこって、僕らの巣だよ。」


「……」



 姿は同じでも、一人称が違う。



 無反応な私を見てか、彼ら2人で顔を見合わせた。 



「見ろよ竜馬、コイツヤバくね?なんか着てる制服ボロボロだし靴履いてねーじゃん。」


「てかこんなセーラーの襟見たことないよね?」


「……」



 まじまじと見つめられ、しまいには「幽霊じゃないよね?」と軽く頭を叩かれた。



「あんたに関わるとろくなことなさそう。いいからさっさと後ろの女渡せ。」


「…か、彼女が、何をしたっていうのですか?」


「あんたには関係ないだろ。」


「もう関わってしまったので、あ、あると思います!」


「…逃げたんだよ。俺らとの契約を破って逃亡した。悪いのはその女だから罰を受けて当然。」



 「もういいだろ?」と後ろの彼女の腕を引く彼ら。



 そして彼女が恐怖の表情で叫んだ。



「や、ヤダっ、もうあんなとこには戻らないッ!!」


「はあ?そっちから契約しといて任期中に逃げるなんて卑怯だぞ?」 


「あんなとこにいたら精神が持たないッ!!もうヤダヤだぁッッ!!!」


「身体はまだまだ元気だろ?どの口が言ってんだよ。」



 一人称"俺"と言う彼が、容赦なく彼女の腕を掴み上げ引き寄せる。



 でも一人称"僕"と言っていた男性が彼女に歩み寄ると、何のためらいもなく彼女の頬をビンタした。




パアンッッ




 男性の威力では女性の比にならない。



 その衝撃に、女性が思わず横に倒れこむ。




 ――――あまりの光景に、息を呑んだ。

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