第53話
お茶を注ぎ終わると、一瞬理解できないものを目の当たりにした。
「っ?!」
あまりにびっくりして、私はお盆にのせていた湯飲みを膝で蹴ってしまい、お茶を溢してしまった。
自分の胸の辺りが青く光り始めたのだ!!
「ななななな何これぇええ!!!」
「瀬里!!!」
今日はたまたま、ここに来た時の格好で、ストライプのシャツにジーンズ、書庫の整理のために紺色のエプロンを着けている私。
シャツの中から、首にかけていた勾玉が浮かび始めた。周りが光っているが、よく見ると、透明だった勾玉が綺麗な水色に全部染まり上がっている。
「!!!!」
きっと私の心が満たされたという証拠なのだろう。"知の聖地"も機能し、この国の財政難も打開する道しるべが示されたのだから。
勾玉が私の首の紐を千切って離れていくと宙に浮んだ。
「智彗様?!!」
「兄さんっ!!!」
私と瑞凪様が驚く顔で見つめる先には、勾玉の光に包まれていく智彗様の姿があった。
眩しさに小さな顔を両腕で覆い、「ああああ!!!!」という呻き声が、光の中から掠れたように聞こえてくる。
縁側から落ちそうになった智彗様を、慌てて受け止めようと手を伸ばすも、私の手で支えることはできなかった。
彼の体重が重すぎたのだ。
そのまま引っ張られるように縁側から落ち、中庭に尻餅をつく智彗様とその上に乗っかる私。
光が徐々に治まっていき、中から現れた彼の姿は、なんと美少年ではなかった。
美青年だった。
「···え?········誰?」
何この中性的な絶世のイケメン。
髪はサラサラで肌は白いし、目は切れ長だし、唇も薄っすらピンクで美しすぎるっ。
そんな彼の顔じっと見つめていると、彼が顔を染めて言った。
「せ、瀬里、私です。智彗です!さすがにこの格好で見つめられると、照れます!///」
「え?ち、智彗様っ?!!」
皇帝陛下ってオジサンじゃないの??志成さんのように髭の生えたオジサンじゃないの??!
ふと智彗様の身体を見ると、服がところどころ破けて肌がいい感じに露出している。小さな智彗様の服は、彼の長身と肉体には合わないらしい。
「ぎ、ぎゃあああっ///ご、ごめんなさい智彗様っ!!!!」
中庭の騒動に何事かと従者や侍女たちが駆け付けると、口々に、「智彗様!ようやく元のお姿にっ!!」と目を潤ませ私たちを見つめている。
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