第26話
執務室で仕事をしていたはずの智彗様が、書庫に慌てて入って来ると、皆に向けて言い放った。
「たたた大変です!!またしても他国から来訪者がやって参ります!!」
「···は?それは、いつの話だ。」
「今です!!今今!!北の検問所より報せが届いたのです!この宮廷に向かっていると!」
そんな唐突に来訪者がやって来るなんて。まさか景郷国の敵国である西絽がやって来たとでもいうのだろうか?!
私と瑞凪様は慌てて智彗様に駆け寄ると、場所を書庫から執務室に移し、従者から事細かに説明を受けた。
「いえ、西絽でも景郷国でもありません!北に位置する
何人もの配備されている配下により、伝言ゲームのように検問所から回ってきた伝達。さすがにその従者も突然の来訪に驚いたのか、汗水たらし全速力で走って来たようだ。
「一体何の目的でしょうか??」
「何でもこの国の資源についてお話したいとか!」
3人で顔を見合わせると、それぞれの顔には「何それ?そんなんあったっけ?」と書かれているように眉をひそめた。
もうこの国には狭い土地しか残されていないというのに、それでも尚奪おうとするなんて皆傲慢すぎる!
とりあえずここまで来て追い返すのは後々面倒なことに成りかねないので、今回もこの3人で来訪者を迎え撃つ(?)こととなった。
"剱東溟"とは景郷国の隣に位置する大国で、ここから二つの国を挟む。
景郷国の同盟国であり、兵の助力だけでなく、物資や武器のやり取りも盛んだとか。ちょうど宮廷の修繕に来ていた景郷国の兵士さんたちに教えてもらった。恐らくうちと景郷国が友好国になったと噂を聞きつけて来たに違いない。
宮廷の前には私たち3人と従者、念のため、景郷国の兵士さんたちもちゃっかり配備させてもらった。
これは前回同様、交渉ということになるのだろうか?
何の心構えもなく、馬に乗り、門から入って来た剱東溟御一行様。ただ4名という少数だけあって、前回のような威圧的な雰囲気がないのが救いだ。
綺麗な焦茶髪の馬から降り、最初に挨拶をしてくれたのは宰相の人だった。
「初めまして、私の名前は剱東溟宮廷 宰相の
物腰が柔らかそうな魯源さんが私たち3人に向かってお辞儀をする。
宰相と聞くとどうしても志成さんのような偏屈者を思い浮かべてしまうが、魯源さんは清潔感のある爽やかなイメージだ。しかも志成さんよりずっと若くみえる。
しかしもう一人の男が颯爽と黒い馬から降りると、明らかに嫌そうな顔で宮廷を見渡した。
「···なんだよ、思ってた以上に寂れてんなこの国は!」
「こら
その洹牙と呼ばれた人物は、赤い髪にシルバーの鎧を纏った騎士のような恰好をしており、隣にいた魯源さんが「これでもこいつは騎士団長をしておりまして、申し訳ありません。」と無理矢理洹牙さんの頭を下げている。
でも智彗様は、「そうなんですよー、この宮廷どころか国自体が寂れてまして」と、満足そうに洹牙さんに笑いかけた。
この国の財政難を理解してもらえ、嬉しそうだった。
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