第22話
「彼女は、瀬里は、とても皇帝陛下の信頼が厚いので、こ、皇帝陛下の認めた者としか婚姻関係は、」
ゴニョゴニョと語尾を濁す智彗様の言わんとしていることがわからない私だが、瑞凪様はすぐに理解したようで、「···ああ、なるほど」と呟いてから俊恵さんにこう告げた。
「···皇太子殿下、瀬里は私の側室候補なので、彼女を口説くのは、ご遠慮願いたい。」
「ぶっ!!」
思わず吹いてしまった私。
まさか宇汾さんの言葉をそのまま鵜呑みにしてるわけじゃないよね?!冗談だよね瑞凪様?!側室とか全く嬉しくないからね?!
「口説く前に牽制されてしまったね。でも友好国になったからには僕は何度も君に会いに来るよ。」
そう言葉を残し帰って行った景郷国ご一行様。
ご一行様が門を出て行くよりも早く、私は智彗様に、助け船を出してくれたお礼と謝罪の言葉を言おうとした。
でも、
「あ、あの智彗様、助けてくれてありがとう!それと、わ、私、勝手なことしちゃってごめんなさ」
「ちょっと疲れたので私は自室で休んでいますね。」
「あっ···」
やっぱり腑に落ちない様子の智彗様は、私を見ることなく宮廷の中へと入って行ってしまった。
「ど、どうしよう瑞凪様···。私····」
あんな笑顔のない智彗様、初めて見た。
何やってるんだろう、一国の皇帝陛下の前でしゃしゃり出すぎだよ私···。
今まで癒しの笑顔ばかりを見てきただけあって、今は心臓を鷲掴みにされたように胸が痛い。
私が瑞凪様に縋るような目を向けると、彼も眼鏡を正して私を見た。
「···側室候補が嫌なら、正室候補という設定に変えてもいい。」
私の気持ちなんて全く理解していないようだった。
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