第13話

「まずは原因を探ることよりも病を治すことが先決です!万能薬が作れる薬草学の書を見てみますね!」



 本の山を飛び越え、薬草学の書があるらしき場所へとちょこちょこと駆けていく智彗様。


 瑞凪様も同じように、迷うことなくその場所に向かう。こんな乱雑に置かれた本の中でもなんとなく場所を把握しているらしい。


 本を読むのが好きすぎて、本の在りかまで感覚的に覚えているのかもしれない。



「···念のため、植物の書も、持ってきた。」



 薬草学の本をじっと読み込んでいる智彗様の元に、植物の和装本をいくつか持ってきた瑞凪様。


 私もその和装本をペラペラとめくってみると、白黒ではあるが、図鑑のように様々な植物の挿絵と説明が書き記されている。



「ああ···”万能薬の処方”については載っていますが、すぐには探せないような珍しい薬草ばかりですね。。」


「····そもそも診療所の既成の原薬もないのであれば、薬草も簡単に手に入る様なものではないだろうな。」



 半ばあきらめ口調の2人は、村の流行り病が感染病の可能性もあるため、村からの移動禁止措置を取るべきかどうかという話にまで発展させていた。



 しかし私は、植物の和装本のあるページで手を止めていた。



「ねえ、宇汾さんが持ってきた山菜ってこれだよね??」



 土筆のように先端に丸みのある、あの山菜の絵が載っているページを2人に見せて言った。



「···そうですね、あ、ちょっと待ってください!」



 智彗様が食い入るように、その和装本を顔に近付けて目を凝らしている。


 何かあるのかと、私も智彗様の隣からずいっと覗き込むと、智彗様が少しビクっと小さな肩を震わせた。



「どうしたの?智彗様。」



 私が和装本から智彗様の顔に視線を移し、至近距離で目が合うと、なぜか智彗様が顔を赤くした。私が首を傾げると、彼はパッと本に向き直り、その山菜の説明をしてくれた。



「こ、これは、ですね、芳逗ホウズと呼ばれる山菜でして、非常に灰汁あくの強い山菜なんです。」


「え、でも宇汾さんは煮て食べると美味しいって言ってたよね?」


「火を通せばいいのですが、生で食べると紫色のアザが顔にでき、喉の痛みを伴う毒にもなるのです。」



 "ここに書いてある"と智彗様が指し示す様に、その説明書きの部分を私に教えてくれた。

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