第40話
私たちもきっと傍から見たら、ミスマッチ、だよね。
21歳と31歳だし。真面目と真面目じゃないだし。学生とバツイチだし。
でも、もしその指に触れられたら、私も不死原君に取り込まれて、ミスマッチがマッチするようになるのかな。
「実は、おばあちゃんの施設に付き添わなきゃいけなくなって…」
頬にかかる髪を、少し顔で払って彼の顔を見る。
ああ、やっぱりな、やっぱり王子スマイルキープだよな。さすが不死原君。断られるのなんて慣れてないだろうけど、私に断られてもチクリとも刺さらないよな。
でも、今目の前にあるのは。
なんだろう。その顔。
余裕しゃくしゃくで、「あ、そうなんですね。ではまた来世のイヴにでもご一緒しましょう。」とか、綺麗な笑顔で社交辞令でも言うのかと思っていたのに。
腑に落ちない顔、でもないな。
まっすぐ私を見つめる不死原君の瞳は揺らいでいるのに、彼の身体は時間が停止したかのように動かない。凍結した?
これって、もしかして、振ったとか、そういうことになるのかな…。
キャリアカウンセラーの本にも上手な断り方なんて書いてなかったから、あたし、わからないや。
「…だから、ごめんね。」
大人は狡いよね。
でもそれ以上に汚いよね。
あたかも「君にピアノを教えてほしい」だなんて気のあることを言っておきながら、1万円というツールで線引きしようとするんだから。
こんな膝の出たタイトスカート履いて、いたいけな男子学生を誘惑しておきながら、踏み込まれそうになった瞬間、突き放そうとするんだから。
ごめんね。綺麗な大人になれなくて。
ごめんね、ごめんねしか言えない大人で。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます