第37話

恋愛が羨ましいから妬んでいるわけじゃない。



私はもっと現実的な悩みに直面しているから妬みたくなるのだ。




"課長に裾カラーを注意された"


"唐揚げ弁当を2日連続で完食して1kg太った"


"不死原君の指が綺麗でりいほの下心をひっこめるのが大変だ"


"不死原君を先生と呼ぶ度に背徳感が芽生えそうになる"


"ところでタケモトピアノって何の会社なの?"



"さて、クリスマスイヴ、どう断ろうか?"



で、思った矢先に現れるのが、誘惑の暴利。





「梨添さん!」


「あっ…っと、不死原くん、」


「今週のピアノのレッスンなんですけど」


「ちょっと声大きいって!」


「土日、俺用事があって。」


「あ、じゃあ今週はなしにする?」



「だから、金曜の夜でもいいですか?」



だめです。


絶対にだめです。



「…え、ふ、不死原君は、いいの?ブラックフライデーといったら学生にとっても社会人にとっても1カ月で1番大事な日だよ?」


「すみません、俺の中ではブラックフライデーよりもフライディ・チャイナタウンの方が浸透してるんで。」


「It's So Fly Day Fly Day ブラックフライディ。」


「思いついたことを平気で口にしないで下さい。語呂悪すぎます。」


「いや、不死原君の中に浸透させようかと思って。」


「では今週のブラックフライディ楽しみにしてますので。」


「あ、早くも浸透してる。」


「浸透率は梨添さんが使っている乳液よりもいいはずです。」



私、乳液使ってないけどな。


化粧水も乳液も一緒になったやつしか使ってないけどな。



、という間にいなくなった不死原君。


おーい…。


なんで不死原君が泰葉知ってるの~。


不死原君ってけっこう古めかしいもの好きだよね~?

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