第36話

でも、"愚者は経験に学ぶ"。


ある時、その私でいるのが急に馬鹿らしくなった。



「息抜きをしていたいだけ」だなんて、よくもまあカッコつけられたもんだ。



こうやって金本さんたちから逃げる理論を並べていくだけで、自分の本音はみえてくる。



私はただ恋愛から逃げているだけ。



だってめんどくさいから。


女ってめんどくさい。男ってめんどくさい。



その先にある結婚を考えるのもめんどくさいし、紐付けるように出産のことをとやかく言われるのもめんどくさい。





1階で消耗品の文具を買いそろえて、階段を上がって行く途中、髪を不必要に触る何人かの女の子たちとすれ違った。



「法学の男に飲み会誘われてさー」

「めっちゃ吉日じゃん」

「でも幹事が元カレの友達なんだよねー」

「えー…ってそれ知ってて誘われたんじゃん?」

「やっぱ?元カレも来たらどうせいっちゅうねん」

「より戻す?その可能性は?」

「Zero~♪」



大学にいる女の子たちの会話の約7割は恋愛話で咲き乱れている。



いいよね、人生にさほど影響がないと思っている時期の恋愛ってさ。結婚よりも結婚式にあこがれを抱いている時期の恋愛ってさ。



でも残念、この学び舎の何分の一かは私みたいにな女になるのよ。今に見てろ。この先に待つのは苦労だけ!



おっと、雑用の疲れからねたみの暴利が顔を出す時間。今にも腕時計が直角の15時を刻みそうだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る