第33話

それが、なんだあの断り方。



あの梨添さんの断り方はなし・・だろう。



「予定を確認してから」って。クリスマスイヴの予定を覚えていない人間なんているか?遠回しも糞もない、"まだ人間になって日が浅いの?"のレベルだ。



「断られてない、って解釈でいいんですか」と言ったのはもちろんわざと。俺を断ろうとした罰として、ちょっとでも困らせてやろうと思って。



いまだ談笑中の桐生を無視し、彼女の背中を追うことにした俺。



梨添さんとピアノレッスンをし始めたのは、7月の後期試験が終わって、8月から始まった。



一昨年死んだ爺さんの家で、週に一度。約90分。



子供のピアノ教室は、大学の授業がない火、水、木で、梨添さんとは土日どちらかの昼間に行われる。



レッスン日の調整のために連絡先も交換している。



例えば、いつもは爽やかな空気の中で行われるレッスンを、一歩間違えれば間違いを起こしそうな空気に変えてみるというのはどうだろう?



「梨添さん!」




彼女をゆさぶるのは楽しい。

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